地震のニュースで必ずといってよいほど出てくる「震源」と「震央」という言葉。この2つをほぼ同じ意味として受け取っていても、日常生活では大きく困ることはないかもしれません。しかし、地震情報を防災に役立てるには、両者の違いと「震源の深さ」が持つ意味を正しく理解しておくことが大切です。
気象庁の発表では、地震情報に「震源の深さ」が必ず含まれています。この数値は、揺れの強さや被害の広がり方を読む上で重要な手がかりになります。浅い地震と深い地震では、同じマグニチュードでも地表への影響が大きく異なるためです。
この記事では、震源と震央それぞれの定義から、震源の深さ・震源距離・震央距離の読み方、そして防災計画への活かし方まで整理します。地震情報を「ただ聞く」から「判断に使う」に変えるための基礎として、ぜひ最後まで読んでみてください。
震源と震央の違いを正確に押さえる
気象庁の地震情報には震源と震央の両方が登場しますが、指し示す場所はまったく異なります。それぞれの定義を正確に理解しておくと、ニュースの読み方が変わります。
震源とは何か
震源とは、地震が発生した際に地球内部の岩石の破壊が開始した地点のことです。気象庁の定義では「地球内部の岩石の破壊が開始した地点」とされており、必ず地下にあります。
岩盤はある一点から破壊が始まり、その破壊が周囲に広がっていきます。この「破壊が始まった最初の一点」が震源であり、破壊が広がった領域全体は「震源域」と呼ばれます。規模が大きい地震では、震源域が数百kmに及ぶこともあります。
震源の位置は緯度・経度・深さの3つの数値で表されます。ニュースで「震源は〇〇沖」と伝えられる場合、その地名は震央地名(震央の位置に付けられた地名)であることが多く、震源そのものの位置とはわずかにずれている場合があります。
震央とは何か
震央とは、震源の真上にあたる地表の地点のことです。国土交通省四国地方整備局の防災解説でも「震源の真上の地表の点」と明示されており、平面的な位置(緯度・経度)で表されます。
気象庁が発表する震央地名は、この緯度・経度の位置に対して付けられた地域名です。テレビやスマートフォンの緊急地震速報で「震源地は〇〇」と表示される場合、正確には「震央地名」を指しています。
注意点として、震央が最も揺れが強いとは限りません。地盤の種類・震源の深さ・建物の構造などによって実際の揺れ方は変わります。震央はあくまで震源の地表上の投影点であり、被害の中心とイコールではない点を覚えておくとよいでしょう。
震源・震央の違いを一言で
震源は「地下の一点」、震央は「その真上の地表の一点」です。深さを持つ3次元の点が震源で、深さを持たない2次元の地表点が震央というイメージで整理できます。
震央:震源の真上の地表点(緯度・経度のみで表される)
震源域:震源から破壊が広がった領域全体
震央地名:気象庁が震央の位置に付ける地域名
- 震源は必ず地下にあり、地表には存在しない
- 震央は地表の点で、気象庁の震央地名として発表される
- ニュースの「震源地」は厳密には震央地名を指していることが多い
- 震央が必ずしも最大震度の地点とは限らない
震源の深さが被害に与える影響
気象庁の地震情報で「震源の深さ〇〇km」と発表される数値は、平均海水面(標高0m)からの深さを指します。この数値が小さいほど浅い地震で、地表への影響が大きくなる傾向があります。
浅い地震と深い地震の違い
震源の深さが約60km以内の地震は「浅い地震(浅発地震)」に分類され、地表での揺れが強くなりやすい特徴があります。震源から地表までの距離が短いほど、地震のエネルギーが減衰しにくいためです。
一方、震源が数百kmに達する「深発地震」では、震央から遠く離れた地域が強く揺れる「異常震域」という現象が起きることがあります。2015年5月の小笠原諸島西方沖地震(M8.1、深さ約590km)では、震央から離れた北海道や東北で震度5強を記録し、震央付近の揺れが相対的に小さかった事例があります。最新情報は気象庁の地震情報ページでご確認ください。
気象庁が発表する震源の深さは、1km単位で計算した結果を四捨五入して10km単位で公表されています。「ごく浅い」と表記されることもあり、これは深さが特定できないほど浅い(数km以内)場合に使われます。
津波リスクとの関係
海底下の浅い場所で大規模な地震が発生すると、津波が引き起こされるリスクが高まります。海底地形が大きく変動するためで、気象庁は震源の深さと規模から津波の発生可能性を即座に評価し、津波警報・注意報を発表します。
内陸の浅い地震では直下型地震となり、震央周辺での強い揺れと建物倒壊リスクが高まります。1995年の阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震、深さ約16km)や2016年の熊本地震(深さ約12km)は、ともに浅い内陸地震で甚大な被害をもたらしました。
防災情報での読み方

気象庁のウェブサイトや緊急地震速報では、震源の深さがリアルタイムで確認できます。速報段階では深さの精度が低い場合もあるため、続報も合わせて確認するとよいでしょう。
自宅や職場が震央に近くても、震源が深ければ揺れが小さい場合があります。逆に震央から離れていても、直下に活断層があれば震源距離が短くなり、強い揺れを受けることもあります。こうした特性を知っておくと、地震情報をより正確に読み取れます。
深い地震(目安:深さ100km以上):広範囲に揺れが伝わりやすく、異常震域が起きる場合がある
海底の浅い地震:津波発生リスクに要注意
気象庁の続報で深さと規模の確定値を確認することが大切
- 震源が浅いほど震央周辺の揺れが強くなりやすい
- 深発地震では遠方が強く揺れる異常震域が発生する場合がある
- 海底浅部の大地震では津波警戒が必要
- 震源の深さは速報値と確定値が異なる場合があるため続報を確認する
震源距離・震央距離の意味と防災での活用
地震情報には「震源距離」と「震央距離」という2種類の距離が登場します。それぞれが指す距離は異なり、緊急地震速報の精度や避難計画の考え方にも関わります。
震源距離と震央距離の定義
震源距離とは、震源(地下の破壊開始点)から観測地点までの3次元的な距離です。地下から観測点への斜め方向の距離と考えるとわかりやすいでしょう。一方、震央距離とは、震央(地表の投影点)から観測地点までの地表上の距離です。
震源が浅い場合は震源距離と震央距離の差は小さくなりますが、震源が深くなるほど両者の差が開きます。例えば震源の深さが50kmで、震央から水平距離50kmの地点にいる場合、震央距離は50kmでも震源距離はおよそ70kmになります。
緊急地震速報と震源距離の関係
緊急地震速報は、震源近くの地震計が揺れを検知してから、S波(主要動)が観測地点に到達するまでの時間を利用して発報されます。震源距離が大きいほど猶予時間が長くなります。
このため、震源距離が近い地点では緊急地震速報が揺れと同時、あるいは揺れの後に届く「間に合わない」ケースもあります。内陸直下型地震では震源距離が極めて短くなるため、速報が届く前に強い揺れが始まることがあります。これは緊急地震速報の特性として内閣府の防災情報でも言及されている点です。
ハザードマップとの組み合わせ方
自宅周辺の活断層の位置を国土地理院のハザードマップポータルサイトで確認しておくと、震源距離の短い地震リスクを把握しやすくなります。活断層が直下にある地域では、規模が小さくても被害が出やすいためです。
ハザードマップポータルサイト(https://disaportal.gsi.go.jp/)では、活断層の分布や液状化危険度なども確認できます。自宅の位置と活断層の位置関係を一度確認しておくと、地震発生時の初動判断に役立ちます。
| 用語 | 計測の起点 | 計測の終点 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 震源距離 | 地下の震源 | 観測地点 | 3次元的な斜め距離。震源が深いほど大きくなる |
| 震央距離 | 地表の震央 | 観測地点 | 地表上の距離。地図上で測れる |
- 震源距離は3次元、震央距離は地表上の2次元で測る
- 震源距離が大きいほど緊急地震速報の猶予時間が長くなる
- 内陸直下型では震源距離が短くなり速報が間に合わないケースがある
- ハザードマップで活断層の位置を確認しておくと震源距離リスクをイメージしやすい
地震情報を防災計画に活かす方法
気象庁が発表する地震情報は、震源・震央・深さ・マグニチュード・各地の震度を含みます。これらの数値を組み合わせて読むことで、次の行動判断がしやすくなります。
気象庁の地震情報の読み方
気象庁の地震情報ページ(https://www.jma.go.jp/)では、地震発生後に「震央地名・震源の深さ・マグニチュード・各地の震度」がまとめて確認できます。震央地名は震央に付けられた地名で、震源そのものの場所とは異なる場合がある点は前述のとおりです。
マグニチュードは地震のエネルギーの大きさを表す数値で、震度は各観測地点の揺れの強さを表します。同じマグニチュードでも震源の深さや地盤条件で震度は大きく変わるため、マグニチュードだけで被害規模を判断しないことが大切です。
自宅周辺の地震リスクの確認手順
まずは気象庁の「震源データベース」や地震本部の公開資料で、自宅周辺で過去に発生した地震の震源分布を確認するとよいでしょう。どの深さ・どの方向から地震が多いかを知ると、揺れの特性をイメージしやすくなります。
次に、国土地理院のハザードマップポータルサイトで活断層の位置を確認します。活断層の直上や近傍では、震源距離が短い地震が起きやすいため、耐震性の確認・家具固定・非常持ち出し袋の整備を優先するとよいでしょう。最新の活断層情報は文部科学省地震調査研究推進本部の公式サイト(https://www.jishin.go.jp/)でも確認できます。
家族との共有と避難計画への落とし込み
「震源の深さが浅い地震が起きやすい地域かどうか」「津波リスクのある沿岸部かどうか」「活断層が近いかどうか」の3点を家族で共有しておくと、地震情報を受けたときの行動判断がスムーズになります。
避難場所・避難ルート・集合場所の確認は、各市区町村のハザードマップをもとに行います。市区町村の防災担当窓口では、地域固有のリスクについて相談することもできます。地震のリスク情報は定期的に更新されるため、年に1回程度は確認し直すとよいでしょう。
1. 気象庁の地震情報で自宅周辺の震源分布を把握する
2. ハザードマップポータルサイトで活断層・液状化リスクを確認する
3. 市区町村の避難場所・避難ルートを家族で共有する
4. 緊急地震速報が間に合わない場合を想定した行動を決めておく
- 気象庁のサイトで過去の震源分布を確認しておくと地域のリスク特性がわかる
- ハザードマップで活断層の位置を確認し、耐震・家具固定を優先する
- 津波リスクのある地域は震源の深さ情報に加えて津波情報を必ず確認する
- 自治体の防災担当窓口に個別リスクを相談することもできる
まとめ
震源は「地下の岩石破壊が始まった点」、震央は「震源の真上の地表点」という違いがあり、震源の深さはその2点間の距離を表します。浅い地震・深い地震・海底地震それぞれで被害特性が異なるため、震源の深さを確認する習慣が防災上の判断力を高めます。
まず気象庁のサイトで自宅周辺の過去の地震データを確認し、ハザードマップポータルサイトで活断層との位置関係を把握してみてください。この2ステップが、地震情報を防災計画に活かす第一歩になります。
地震情報を「ただ聞く情報」から「行動の根拠となる情報」に変えていくために、この記事が少しでも役立てば幸いです。日頃からの備えが、いざというときの判断を支えます。
本記事の内容は、公的機関・メーカー公式情報などの一次情報をもとに整理したものです。実際の避難行動・食品の安全判断・機器の使用可否については、各自治体や公的機関の最新情報を必ずご確認ください。


