QGIS 5mメッシュで自宅周辺を立体把握する|見落としがちな標高の盲点

QGIS 5mメッシュによる地形データや立体地図から、標高の盲点と防災対策を連想させるイメージ画像 災害知識・ハザードと計画

自宅の周辺がどれだけ低い土地にあるか、視覚的に確認できている人はそれほど多くありません。国土地理院が無償で公開している5mメッシュの標高データをQGIS(地理情報システムソフトウェア)で読み込むと、自宅付近の標高の高低差を地図上で直感的に把握できます。

ハザードマップポータルサイト(国土交通省・国土地理院)では浸水想定区域や土砂災害警戒区域を確認できますが、5mメッシュデータを組み合わせることで、自分の目線に近い粒度で地形を読むことができます。

この記事では、5mメッシュデータの基本的な性質とQGISでの読み込み・活用手順を、防災視点でわかりやすく整理します。これから自宅周辺のリスクを自分で確認したい方に向けた内容です。

5mメッシュとは何か、防災でなぜ重要なのか

国土地理院の数値標高モデル(DEM)には1mメッシュ・5mメッシュ・10mメッシュの3種類があります。5mメッシュは5m×5mの格子ごとに標高値を持つデータで、航空レーザー測量をもとに作成されています。10mメッシュと比べると格子が細かく、住宅地の微妙な地形の起伏も読み取れます。

5mメッシュと10mメッシュの違い

10mメッシュは地形図から作成されたデータを含むため、全国どこでも入手できます。一方、5mメッシュは航空レーザー測量が実施された地域に限られ、湖沼・河川の水面部分に欠測が生じる場合があります。

精度の面では5mメッシュが有利で、宅地内の数十センチ単位の高低差を把握するうえで役立ちます。浸水や土砂の流れ込みは地形の微細な凹凸に大きく左右されるため、防災用途では5mメッシュの方がより実態に近い地形表現ができます。

標高データが防災計画に役立つ理由

浸水害は低い土地ほど深刻になります。自宅が周囲より1m低い場所にあるだけで、洪水時の浸水深が大きく変わります。ハザードマップポータルサイト(国土交通省・国土地理院)が提供する洪水浸水想定区域図も、この標高データをもとに作成されています。

自分でQGISに5mメッシュを読み込めると、ハザードマップでは確認しにくい「自宅の敷地内の高低差」「避難経路上の低地」「近隣の水路との標高差」といった情報を視覚化できます。地域の防災訓練や自主防災組織での活動にも活用されています。

欠測・データ制限への備え

国土地理院の基盤地図情報ダウンロードサービスのヘルプページでは、5mメッシュのデータ形式について「JPGIS(GML)形式、地上画素サイズ5m」と明記されています。水面部の欠測がある場合は、同サービスから10mメッシュデータを取得し、欠測箇所を補完する方法が有効です。

ダウンロードには利用者登録(無料)が必要です。利用目的によっては国土地理院への申請が必要な場合があるため、国土地理院公式サイトの「地図の利用手続ナビ」で事前に確認しておくと安心です。

5mメッシュの特徴まとめ
・格子サイズ:5m×5m(航空レーザー測量由来)
・水面部に欠測が生じる場合あり
・10mメッシュとの使い分けが有効
・利用者登録(無料)が必要
    >5mメッシュは航空レーザー測量由来で、住宅地の微細な地形把握に適している>水面付近に欠測が発生することがあり、10mメッシュとの併用で補える>ダウンロードには国土地理院の利用者登録(無料)が必要>利用目的によっては申請手続きが求められる場合がある>ハザードマップの浸水想定区域は、この標高データをもとに作成されている

QGISの基本構造と5mメッシュ活用の全体像

QGISは無償で利用できるオープンソースのGISソフトで、Windows・Mac・Linuxで動作します。地図データを「レイヤ」として重ね合わせる仕組みで、5mメッシュのような標高データ(ラスタデータ)と、避難所の位置情報(ベクタデータ)を同一画面で確認できます。

GISとラスタ・ベクタの基本概念

GISでは地理情報を「ラスタデータ」と「ベクタデータ」に大別します。ラスタデータはメッシュ状の格子に数値(標高値など)を持つデータで、5mメッシュの標高データがこれにあたります。ベクタデータはポイント・ライン・ポリゴンで地物の位置や形状を表すデータで、避難場所の位置情報や洪水浸水想定区域のポリゴンがこれにあたります。

QGISではこの2種類を自由に重ね合わせられるため、標高マップの上に浸水想定区域を重ねて表示したり、避難所のポイントと浸水リスクを照合したりすることができます。GIS実習オープン教材(国立大学法人等が公開する教育用資料)でも、QGISを使った地形環境分析の手順が無償公開されています。

レイヤ構造と表示順の仕組み

QGISのレイヤパネルでは、上に積まれたレイヤが優先して表示されます。5mメッシュの標高データをベースレイヤとして下に置き、その上に浸水想定区域のポリゴンや避難所のポイントを重ねる構成が基本です。

各レイヤの透過性を調整すると、複数のデータが重なった部分も読み取りやすくなります。国土交通省が提供している国土数値情報の洪水浸水想定区域データは、QGISにドラッグ&ドロップするだけで読み込めます。

QGISの入手とインストール

QGISの公式サイト(qgis.org)から最新版とLTR版(長期サポート版)をダウンロードできます。防災用途では、機能の安定性を重視してLTR版を選ぶとよいでしょう。インストール後は日本語インターフェースで操作でき、GIS未経験者でも基本操作から始めやすい環境が整っています。

データ種別形式主な活用場面
5mメッシュ(DEM)ラスタ(GeoTIFF変換後)標高地図・陰影図・断面図の作成
洪水浸水想定区域ベクタ(シェープファイル)浸水範囲・深さの可視化
指定緊急避難場所・指定避難所ベクタ(GeoJSON/CSV)避難所ごとのリスク確認
    >QGISは無償のオープンソースGISで、LTR版が安定して使いやすい>5mメッシュはラスタデータ、避難所情報などはベクタデータとして扱う>レイヤを重ねる順序を意識するとデータが読み取りやすくなる>国土数値情報の洪水浸水想定区域データはドラッグ&ドロップで読み込める

5mメッシュデータのダウンロードからQGIS読み込みまで

5mメッシュデータのダウンロードから表示までの手順は、大きく「ダウンロード」「形式変換」「QGIS読み込み」の3段階に分かれます。それぞれの段階での注意点を押さえておくと、作業がスムーズに進みます。

基盤地図情報ダウンロードサービスの操作手順

国土地理院の基盤地図情報ダウンロードサービス(service.gsi.go.jp/kiban/)にアクセスし、利用者登録(無料)後にログインします。「数値標高モデル」ボタンをクリックし、検索条件で「5A(航空レーザー測量)」を選択してダウンロード対象の地域を指定します。

地域の選択方法は「地図上で選択」「市区町村単位で選択」「地方区分単位で選択」の3種類があります。自宅周辺を対象とする場合は「市区町村単位で選択」が手順として分かりやすいです。ダウンロードされるファイルはZIP形式で、中身はJPGIS(GML)形式のXMLファイルです。

QuickDEM4JPプラグインによる形式変換

ダウンロードしたXMLファイルはそのままQGISで扱えないため、プラグイン「QuickDEM4JP」を使ってGeoTIFF形式に変換します。QGISのプラグインマネージャを開き「QuickDEM4JP」を検索してインストールします。

起動後の入力画面では、ダウンロードしたZIPファイルまたはXMLファイルを指定し、出力形式として「GeoTIFF」を選択します。「アルゴリズムの終了後にQGIS上で出力ファイルを開く」にチェックを入れておくと、変換完了と同時に地図上に標高データが表示されます。GeoTIFF形式は汎用性が高く、以降の解析作業でも扱いやすいフォーマットです。

読み込み後の確認ポイント

読み込みが完了したら、QGISの下部ステータスバーでカーソルの座標と標高値を確認しながら、データが意図した地域を覆っているかを確認します。ラスタ情報(ラスタ>その他>ラスター情報)を開くと、セルサイズ・最低標高・最高標高・平均標高などの統計情報が一覧表示されます。

数値標高モデルを利用する際は、国土地理院のルールに基づいて出典の記載が必要です。詳細は国土地理院公式サイト内の「出典の記載」ページでご確認ください。

ダウンロード〜読み込みの流れ
1. 基盤地図情報ダウンロードサービスで利用者登録(無料)
2. 「5A(航空レーザー測量)」を選択して対象地域をダウンロード
3. QuickDEM4JPプラグインでGeoTIFFに変換
4. QGISに読み込み、出典を記載
    >ダウンロードには利用者登録(無料)が必要>ファイルはXML形式のため、QuickDEM4JPプラグインでGeoTIFFに変換してから使う>出典の記載が義務付けられているため、国土地理院のルールを事前に確認する>ラスタ情報で統計量を確認することで、データの品質チェックができる

標高データの可視化で防災リスクを読み取る

QGIS 5mメッシュを使った地形分析や標高の確認による防災対策を表すイメージ画像

読み込んだ5mメッシュデータは、そのままでは白黒のグラデーションで表示されます。配色やレンダリングタイプを変更すると、標高の高低や地形の陰影が一目で分かる地図に変わります。可視化の種類と、防災上の読み取りポイントを整理します。

標高段彩図・陰影図・陰影段彩図の作り方

レイヤのプロパティ>シンボロジから「単バンド疑似カラー」を選択すると、標高値に応じた色分け(標高段彩図)を作れます。低地は青系、高地は赤系など、直感的に分かる配色にすることで、自宅と周辺の高低差が視覚的に把握できます。

「陰影図」(ラスタ>地形解析>陰影図)を作成すると、光の当たり方で地形の凹凸が立体的に浮かび上がります。さらに標高段彩図と陰影図を重ね合わせて透過率を調整した「陰影段彩図」にすると、微細な地形が非常に読み取りやすくなります。GIS実習オープン教材でも、この陰影段彩図を防災地図作成の基本として位置付けています。

浸水想定区域データとの重ね合わせ

国土数値情報(国土交通省)の洪水浸水想定区域データをQGISに読み込み、5mメッシュの標高データの上に重ねると、「浸水想定区域と自宅の標高差」を視覚的に比べられます。2025年4月に国土交通省が公開したQGIS活用マニュアルでは、浸水深ランクを6段階(0m以上0.5m未満〜20m以上)に色分けする標準配色が示されており、この基準に従うと他のデータとの比較がしやすくなります。

避難所のデータは国土地理院が公開している「指定緊急避難場所・指定避難所データ」(GeoJSON形式)をQGISに読み込み、属性の空間結合機能で各避難所の浸水ランクを付与できます。浸水ランクが高い避難所が近くにある場合は、別の避難先も候補として検討するとよいでしょう。

傾斜区分図・斜面方位図の読み方

「傾斜区分図」(ラスタ>解析>傾斜)は土砂災害リスクの把握に役立ちます。急傾斜地崩壊危険箇所は各都道府県の砂防・治山担当部局が指定していますが、傾斜区分図で視覚的に傾斜が大きい場所を確認することで、自宅周辺の地形的なリスク感覚をつかめます。

「斜面方位図」(ラスタ>地形解析>傾斜方位)は、どの方向に斜面が向いているかを示します。斜面の方位と豪雨の来る方向が一致すると雨水が集まりやすい地形になる場合があります。これらの分析結果は、自治体が提供するハザードマップと必ず照合し、最終的な避難判断は自治体や公的機関の最新情報を確認してください。

可視化の種類QGISでの操作防災上の読み取りポイント
標高段彩図シンボロジ>単バンド疑似カラー低地・高地の分布、自宅周辺の相対的高さ
陰影図ラスタ>地形解析>陰影図地形の凹凸、谷地形・盛土地形の確認
傾斜区分図ラスタ>解析>傾斜急傾斜地・土砂リスク箇所の概況把握
浸水想定区域の重ね合わせ国土数値情報データを追加してレイヤ重ね浸水深ランク・避難所ごとのリスク確認
    >標高段彩図で高低差を配色表現し、自宅の位置を相対的に把握できる>陰影段彩図にすると地形の微細な凹凸が読み取りやすくなる>浸水想定区域データとの重ね合わせで、避難所のリスクも確認できる>傾斜区分図は土砂リスクの概況把握に役立つ>分析結果は自治体のハザードマップと必ず照合する

防災計画に5mメッシュを組み込む具体的な使い方

標高データを可視化した地図は、日常の防災計画にそのまま役立てられます。作成した地図を使って何を確認すべきか、どう行動計画に落とし込むかという視点で整理します。

自宅・避難経路・避難所の標高を比べる

自宅と最寄りの避難所それぞれの標高値をQGISで確認し、比較します。避難経路の途中に低地や橋が含まれる場合、洪水時にその経路が使えなくなる可能性があります。複数の避難経路を事前に地図上で確認し、標高の高い経路を第1候補として家族と共有しておくと安心です。

断面図作成機能(QGISプラグイン「VoGIS Profile Tool」など)を使うと、自宅から避難所までの経路の標高断面を可視化できます。経路上のどの区間が低くなっているかが一目で分かり、「ここは増水したら通れなくなる」という具体的な判断に役立ちます。

地域の自主防災活動への活用

5mメッシュで作成した標高地図は、自主防災組織の活動や防災訓練の資料として使えます。地域の低地・高地の分布を視覚化した地図を共有することで、住民同士で「どこに避難するか」「どの道を通るか」を話し合う材料になります。

国土交通省が2025年4月に公開したQGIS活用マニュアルでも、住民が災害リスクを把握するためのGIS活用を推奨しています。航空レーザー測量データを地域防災や住民への情報共有に活用した事例も報告されています。

最新データの取得と定期的な更新

基盤地図情報の5mメッシュは、航空レーザー測量が更新されると新しいデータが公開されます。国土地理院の基盤地図情報ダウンロードサービスでは過去データも確認でき、令和6年能登半島地震の対応として石川県能登地域で実施された航空レーザー測量データも公開されています。

大規模災害後は地形が変化することがあるため、被害想定の見直しや防災計画の更新に合わせて、最新データを取り直す習慣を持つとよいでしょう。最新データの有無は国土地理院の基盤地図情報サイト(gsi.go.jp/kiban/)で確認できます。

防災計画への活用チェックリスト
・自宅・避難所・経路の標高値を比較したか
・経路上の低地・橋・水路を地図上で確認したか
・複数の避難経路を家族と共有したか
・最新の5mメッシュデータを使用しているか
    >自宅と避難所の標高差を確認し、複数の避難経路を家族と共有しておく>断面図で経路上の低地を視覚化すると「使えなくなる道」が事前に分かる>自主防災組織の活動に標高地図を活用すると地域での共有が円滑になる>大規模災害後は地形が変化するため、最新データへの更新を習慣化する

まとめ

QGISの5mメッシュ活用は、自宅周辺の地形リスクを自分の目で確認するための有効な手段です。国土地理院の無償データを使い、標高段彩図・陰影図・浸水想定区域との重ね合わせを組み合わせることで、ハザードマップだけでは見えにくかった微細な地形情報を防災計画に組み込めます。

まず試してみるとしたら、基盤地図情報ダウンロードサービスに利用者登録(無料)して、自宅の市区町村の5mメッシュデータを1枚ダウンロードすることから始めてみてください。QuickDEM4JPプラグインで変換してQGISに読み込むだけで、地形の全体像がつかめます。

地形は変わらないようで、災害後には少しずつ変化しています。定期的にデータを更新しながら、家族と一緒に避難経路を確認する機会を作っていただければ幸いです。

本記事の内容は、公的機関・メーカー公式情報などの一次情報をもとに整理したものです。実際の避難行動・食品の安全判断・機器の使用可否については、各自治体や公的機関の最新情報を必ずご確認ください。

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