QGISで基盤地図情報プラグインを活用する|ハザードマップ作成で見落としがちな準備手順

災害知識・ハザードと計画

自宅周辺の地形リスクを自分で把握したいとき、QGISと基盤地図情報は強力な組み合わせになります。国土地理院が無料公開している標高データをQGISのプラグインで読み込むことで、市販のハザードマップには載っていない細かな地形情報を視覚化できます。防災計画の第一歩として、まず自宅の標高と地形的な特徴を知っておくことは非常に大切です。

QGISは無料で使えるGIS(地理情報システム)ソフトウェアです。初めて耳にする方でも、プラグインを活用すれば専門知識なしで標高地図や陰影図を作成できます。特に「QuickDEM4JP」というプラグインは、基盤地図情報の数値標高モデルをQGISで扱える形式に変換するために設計されており、防災用途での活用が広がっています。

この記事では、基盤地図情報のダウンロード方法からプラグインのインストール・設定・活用まで、防災マップ作成の観点で整理します。自治体のハザードマップと組み合わせて使うことで、避難計画の精度を高めるヒントになります。

QGISと基盤地図情報でできること

QGISと基盤地図情報を組み合わせると、自宅周辺の標高・地形特性・浸水リスクなどを自分でビジュアル化できます。国土地理院が提供する基盤地図情報には3種類のデータが含まれており、それぞれ防災用途で異なる役割を持ちます。

基盤地図情報の3種類のデータ

基盤地図情報には「基本項目」「数値標高モデル(DEM)」「ジオイド・モデル」の3つがあります。防災用途で特に重要なのは数値標高モデル(DEM)で、メッシュ単位で地表の標高値が記録されています。

DEMには5mメッシュと10mメッシュの2種類があります。5mメッシュは航空レーザー測量による高精度なデータで、都市部など詳細な地形解析が必要な場面で役立ちます。10mメッシュは全国をほぼカバーしており、広域の地形把握に適しています。※最新のメッシュ区分の詳細は国土地理院公式サイトの「基盤地図情報ダウンロードサービス」ページでご確認ください。

基本項目には建物の外周線・道路・海岸線・行政区画の境界線などが含まれます。避難ルートの確認や建物密集度の把握など、ハザードマップと組み合わせて使うことで、より実用的な防災地図を作れます。

QGISが防災計画に役立つ理由

QGISはオープンソースのGISソフトで、Windows・Macどちらでも無料で使えます。国土地理院の地理院地図や自治体公開のハザードマップデータ、国土交通省の洪水浸水想定区域データをQGISに重ね合わせることで、複数のリスク情報を1つの画面で比較できます。

国土交通省国土数値情報では、洪水浸水想定区域データをシェープファイル形式で公開しており、QGISに読み込むことで色分けや避難所との距離計算などの解析が行えます。自治体配布のハザードマップは印刷物が多く、詳細な比較や計測が難しい場合がありますが、QGISを使うことでデジタル上で柔軟に操作できます。

国土交通省PLATEAUプロジェクトでは、3D都市モデルをQGISで可視化するプラグインも公開されています。建物の高さや形状を含むデータを災害リスク情報と重ねることで、津波や洪水の際の浸水深と建物構造を合わせて把握する使い方もあります。

基盤地図情報の3種類のデータ
・基本項目:建物・道路・海岸線・行政区画など
・数値標高モデル(DEM):5mまたは10mメッシュの標高値
・ジオイド・モデル:精密な標高補正に使用
  • QGISは無料で使えるGISソフト(Windows・Mac対応)
  • 国土地理院・国土交通省のオープンデータと組み合わせて使える
  • 自宅周辺の標高・浸水リスク・避難ルートをデジタルで確認できる
  • 自治体ハザードマップとの重ね合わせで防災計画の精度が上がる

基盤地図情報のダウンロード手順

基盤地図情報ダウンロードサービスは利用者登録制です。データ取得前にアカウントを作成する必要があります。国土地理院公式の「基盤地図情報ダウンロードサービス」(fgd.gsi.go.jp)にアクセスし、まず無料の利用者登録を済ませます。

アカウント登録と基本的な流れ

国土地理院の基盤地図情報ダウンロードサービス(fgd.gsi.go.jp/download/menu.php)では、ページ右上のログインボタンからアカウントを作成します。登録は無料で、メールアドレスがあれば手続きできます。

ログイン後、ページをスクロールすると「数値標高モデル」ボタンが表示されます。これをクリックするとデータ選択画面へ進みます。地図上での直接選択のほか、市区町村単位・地方区分単位での選択も可能です。自宅が属する市区町村を選んで絞り込む方法が、初めての方には操作しやすいでしょう。

5mメッシュと10mメッシュの選び方

ダウンロード画面の「検索条件指定」では、5mメッシュ(DEM5A・DEM5B・DEM5C)と10mメッシュ(DEM10B)から選択します。5mメッシュのうちDEM5Aは航空レーザー測量によるデータで、最も精度が高い種別です。

防災目的で初めて使う場合、まず10mメッシュで広域の地形を確認し、自宅周辺だけ5mメッシュで詳細を確認する流れが使いやすいです。ファイルサイズはメッシュが細かいほど大きくなるため、処理速度とのバランスを考えてメッシュを選ぶとよいでしょう。

ダウンロードしたファイルの形式について

ダウンロードしたファイルはZIP形式で圧縮されており、展開するとXMLファイルが含まれています。QGISはXMLをそのままでは標高データとして読み込めないため、変換が必要です。この変換作業を担うのが「QuickDEM4JP」プラグインです。

XMLファイルは国土地理院が定める独自形式で構造化されています。QGISのプラグインマネージャを使えば、専門知識がなくても変換処理を実行できます。ファイルの保存場所は日本語を含まないパス(フォルダ名)に置くと、変換時のエラーを防ぎやすいです。

DEMメッシュ種別の比較
種別解像度測量方法主な用途
DEM5A5mメッシュ航空レーザー測量詳細な地形解析・都市部
DEM5B5mメッシュ図化・写真測量等5A未整備エリアの補完
DEM10B10mメッシュ等高線・標高点広域の地形把握
  • 利用者登録(無料)が必要。メールアドレスで登録できる
  • 市区町村単位での選択がわかりやすく初心者向き
  • ダウンロードされるのはXML入りのZIPファイル
  • ファイルの保存先は日本語を含まないフォルダ名が推奨

QuickDEM4JPプラグインのインストールと設定

QuickDEM4JPは、基盤地図情報のXML形式の標高データをGeoTIFFやTerrain RGB形式に変換するためのQGISプラグインです。プラグインマネージャから無料でインストールでき、変換後にそのままQGISで標高地図を表示できます。

プラグインマネージャからのインストール手順

QGISを起動し、画面上部のメニューから「プラグイン」→「プラグインの管理とインストール」を選択します。表示された画面の検索ボックスに「QuickDEM4JP」と入力し、候補に表示されたプラグインを選んで「プラグインをインストール」をクリックします。

インストールが完了すると、QGISのツールバーにXMLアイコンが追加されます。このアイコンがQuickDEM4JPの起動ボタンになります。プラグインが表示されない場合は、「インストール済み」タブを確認し、プラグインが有効化されているかチェックします。

変換の基本操作手順

QGISで基盤地図情報プラグインを活用したハザードマップ作成時の防災対策や事前準備を表すイメージ画像

QuickDEM4JPを起動すると設定画面が開きます。「DEM」項目の右にある「…」ボタンをクリックし、ダウンロードしたXMLファイルまたはZIPファイルを指定します。入力形式は「xmlまたはxmlを含むzip」で問題なく対応しています。

出力形式は「GeoTIFF」を選択します。Terrain RGB形式はQGIS上でさらなる処理が必要なため、初めての場合はGeoTIFFのみを選ぶと扱いやすいです。出力先フォルダと座標系(CRS)を指定して「OK」をクリックすると、変換処理が始まります。変換が完了すると、自動的にQGISの画面上に標高地図が表示されます。

CRS(座標参照系)の選び方

CRS(座標参照系)は、地図データの位置をどの基準で表現するかを決める設定です。日本国内のデータには、国土地理院が定める「JGD2011」(EPSG:6668)か、投影座標系の「平面直角座標系」が一般的に使われます。

ハザードマップポータルサイトのデータや国土数値情報のデータと重ね合わせる場合、CRSを統一しておかないとデータがずれて表示されます。防災用途では自分の地域に対応する平面直角座標系の番号(系番号)を確認してから設定するとよいでしょう。各系番号と対応地域は国土地理院の公式サイトで確認できます。

QuickDEM4JPで変換する際のポイント
・入力はXMLまたはXML入りのZIPをそのまま指定できる
・出力形式はGeoTIFFを選ぶのが基本
・CRS(座標参照系)は使用するデータと統一すること
・保存先フォルダは日本語を含まない英数字のパスが安全
  • プラグインマネージャから「QuickDEM4JP」を検索してインストール
  • インストール後はツールバーのXMLアイコンで起動
  • 出力形式はGeoTIFFを選択するのが基本
  • CRSは重ね合わせる他のデータと合わせて設定する

標高データを防災に活かす活用法

標高地図を作るだけでなく、防災計画に直結させて活用することが大切です。陰影図・等高線・浸水想定区域との重ね合わせなど、QGISの機能を使えば自宅周辺のリスクをより具体的に把握できます。

陰影図と標高段彩図で地形を視覚化する

GeoTIFFをQGISに読み込んだら、レイヤープロパティの「シンボロジ」から「レンダリングタイプ」を「陰影図」に変更すると、光の当たり方で地形の起伏が立体的に見えます。高度・方位角などの設定を調整することで、急傾斜地や谷地形などが視覚的に浮かび上がります。

標高データのレイヤをコピーし、片方を陰影図・もう片方を段彩図(カテゴリ値パレット)として設定して重ね合わせると、色と影の両方で標高変化を確認できる「陰影段彩図」が作れます。低地・河川沿い・急斜面など、浸水や土砂災害のリスクが高いエリアの特定に役立ちます。

洪水浸水想定区域データとの重ね合わせ

国土交通省の国土数値情報では、洪水浸水想定区域データをシェープファイル形式で公開しています。このデータをQGISに読み込み、QuickDEM4JPで作成した標高レイヤの上に重ねると、実際の地形と浸水深の関係を視覚的に確認できます。

ハザードマップポータルサイト(disaportal.gsi.go.jp)が提供するタイル画像をXYZ Tilesとして背景に使う方法も有効です。地理院地図タイルを背景にして、上に洪水浸水想定データや標高データを重ねることで、地名・道路・建物の位置と災害リスクを1画面で把握できます。避難所のデータも国土数値情報から取得してレイヤ追加すると、避難ルートの検討が具体的になります。

等高線データで避難ルートを確認する

QGISには、DEM(数値標高モデル)から等高線を自動生成する機能があります。メニューの「ラスタ」→「地形解析」→「等高線」から実行できます。等高線の間隔を設定することで、緩やかな斜面と急斜面の違いが一目でわかる地図が作成できます。

避難時に急斜面や段差がある区間を事前に把握しておくと、実際の避難行動をより現実に即した形で計画できます。車椅子や高齢者がいる家庭では、等高線から読み取れる勾配情報が避難経路の選定に直接役立ちます。自治体の避難計画と組み合わせて、実際に歩ける経路かどうかを地図上で事前確認しておくとよいでしょう。

QGISで重ね合わせるデータと主な用途
データ名提供元主な活用目的
数値標高モデル(DEM)国土地理院地形把握・陰影図・等高線作成
洪水浸水想定区域国土交通省(国土数値情報)自宅・避難所の浸水深確認
ハザードマップタイル国土交通省(ハザードマップポータル)背景地図として災害リスクを視覚化
避難所データ各自治体・国土数値情報避難ルートの計画・距離計算
  • 陰影図・段彩図で地形の起伏が視覚的に把握できる
  • 洪水浸水想定データを重ねて自宅周辺のリスクを確認できる
  • 等高線で避難経路の勾配・急斜面を事前確認できる
  • 避難所データも追加して経路計画に役立てる

使う際に注意しておきたいポイント

QGISと基盤地図情報は無料で使えますが、データの利用条件・精度の限界・ソフトの動作環境など、防災用途で使う際に押さえておくべき点があります。見落としがちな注意事項をここで整理します。

基盤地図情報の出典表記と利用条件

国土地理院が公開する基盤地図情報は、利用にあたって出典の記載が必要です。商業利用や印刷配布など利用目的によっては、出典記載に加えて国土地理院への申請が必要になる場合があります。詳細は国土地理院公式サイト内「地図の利用手続ナビ」ページで確認できます。

個人の防災計画や家族との共有を目的とした利用は比較的ハードルが低いですが、必ず最新の利用規約を確認してください。※利用条件は改定される可能性があるため、国土地理院公式サイトで現行の規約をご確認ください。

標高データの精度と防災利用の限界

5mメッシュDEM5Aは高精度ですが、データ整備時点の地形を表しています。宅地造成・土地改変・大規模工事後の地形変化は反映されていない場合があります。また、建物屋上や樹木の高さが含まれる場合があり、地表面の標高と一致しないケースもあります。

QGISで作成したマップはあくまでも事前の情報整理ツールです。実際の避難行動は自治体が発令する避難情報・避難指示に従ってください。自宅周辺のハザードマップについては、各自治体が公開する最新版のハザードマップポータルサイト(disaportal.gsi.go.jp)を必ずあわせて参照することが大切です。

QGISの動作環境と注意点

QGISはWindowsとMacに対応しており、バージョンは定期的に更新されます。インストール時には公式サイト(qgis.org)からLTS(長期サポート)版を選ぶと、プラグインとの互換性が安定しやすいです。

QuickDEM4JPなどのプラグインは、QGISのバージョンによって動作が異なる場合があります。プラグインの更新状況はQGISのプラグインマネージャで確認でき、新しいバージョンがあれば更新しておくと不具合を防ぎやすいです。ファイルパスに全角文字(日本語フォルダ名)が含まれると変換エラーが起きる場合があるため、半角英数字のフォルダ名で管理することを推奨します。

使用前に確認しておきたいこと
・基盤地図情報の利用には出典記載が必要(目的によっては申請も必要)
・標高データはデータ整備時点の地形を反映しており、現在の地形と異なる場合がある
・QGISはLTS版を選ぶとプラグインとの互換性が安定しやすい
・作成マップは参考情報。避難行動は自治体の避難情報に従うこと
  • 利用規約・出典記載の確認は国土地理院公式サイトで行う
  • 標高データは整備時点の地形であり、現在と差がある可能性がある
  • QGISはLTS版が安定しやすい
  • QGISのマップは事前計画の補助ツールであり、避難行動は自治体の指示を優先する

まとめ

QGISと基盤地図情報のプラグイン「QuickDEM4JP」を活用することで、無料で自宅周辺の標高地図・陰影図・等高線を作成し、洪水浸水想定データと組み合わせた防災マップを作ることができます。

まず基盤地図情報ダウンロードサービスで利用者登録を行い、自宅の市区町村を選んでDEMデータを1件取得してみることが最初の一歩です。QGISにQuickDEM4JPをインストールして変換・表示するまでの一連の作業は、手順通りに進めれば初めての方でも対応できます。

自分で地形データを見ることで、ハザードマップの数字が具体的なイメージと結びつきます。ぜひ家族で画面を一緒に見て、避難経路の話し合いの出発点にしてみてください。

本記事の内容は、公的機関・メーカー公式情報などの一次情報をもとに整理したものです。実際の避難行動・食品の安全判断・機器の使用可否については、各自治体や公的機関の最新情報を必ずご確認ください。

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