地震がまったく起きない国は、地球上に存在しません。しかし、日本のように年間数百回以上の有感地震を経験する国と比べると、地震リスクが極めて低い地域が世界には数多くあります。その違いは、プレートテクトニクス(地球表面を覆う巨大な岩盤の動き)という地質学的な構造に起因しています。
日本の防災対策を考えるとき、自国のリスクを客観的に理解するための比較軸として「地震の少ない国」を知っておくことは有効です。海外に家族がいる方、長期出張や移住を検討している方にとっても、各地域の地震リスクを把握しておくことは防災準備の一環になります。
この記事では、なぜ地震が少ない国があるのか、その科学的な背景と具体的な地域、そして日本にいる読者が防災計画に活かせる視点を整理します。
地震が少ない国が存在する理由
地球の表面は十数枚のプレートで覆われており、それぞれが年間数センチ単位で動き続けています。プレート同士がぶつかり合う境界付近では、岩盤の歪みが蓄積されやすく、地震が頻繁に発生します。一方、プレートの内側、つまり境界から遠く離れた「安定陸塊」と呼ばれる地域では、長期にわたって大きな地殻変動が起きにくい状態が続きます。
プレート境界と日本の位置
気象庁の資料では、日本列島はユーラシアプレート・北米プレート・フィリピン海プレート・太平洋プレートという4枚のプレートが交わる位置に重なっていると説明されています。これは世界でも例のない地質条件であり、日本が地震多発国である根本的な理由です。
世界全体で発生するマグニチュード6以上の地震のうち、約2割が日本周辺で起きているとされています。この数字は、日本に住む人が日常的に地震と向き合わざるを得ない環境にあることを端的に示しています。
安定陸塊とはどのような地盤か
安定陸塊とは、数億年以上にわたって大きな地殻変動を受けていない古い岩盤地帯のことです。北欧のスカンジナビア半島や、アラビア半島中央部、オーストラリア大陸の内陸部などがその代表例です。これらの地域は活断層がほとんど存在せず、地盤が非常に固く安定しています。
安定陸塊に位置する国では、有感地震(人が揺れを感じる規模の地震)の発生頻度が日本と比べて格段に低くなります。ただし「ゼロ」ではなく、遠方の大地震の影響で微小な揺れが届くことは稀にあります。
火山活動との関係
地震が少ない地域は、火山活動も少ない傾向があります。火山はプレート境界付近や、プレートが沈み込む場所の上部に形成されることが多いためです。安定陸塊にある国では、活火山がほぼ存在せず、火山性地震のリスクも低い状態が続いています。
日本では気象庁が111の活火山を管理・監視しており(※最新の火山数は気象庁公式ウェブサイトの「活火山の定義と活火山数」でご確認ください)、地震と火山噴火が複合的な災害リスクをもたらしています。地震リスクを下げることはできませんが、備えることで被害を減らすことはできます。
・プレート境界から地理的に遠く離れている
・安定陸塊(古い硬い岩盤)の上に位置する
・活断層がほとんど存在しない
・火山活動も少ない傾向がある
- 日本は4枚のプレートが交わる位置にあり、世界でも地震リスクが特に高い地域です
- 安定陸塊に位置する国では有感地震の頻度が極めて低くなります
- 地震リスクが低い地域は火山リスクも低い傾向があります
- 「地震がゼロ」の国は地球上に存在しません
地震リスクが低い国・地域の具体例
世界各地の地質状況を比較すると、地震リスクが低い国はいくつかの地域に集中しています。中東、北欧、東南アジアの一部、オーストラリアなどが代表的なグループです。それぞれの地域がなぜ安定しているのかを見ておくと、地震リスクの構造が理解しやすくなります。
中東・アラビア半島(カタール・サウジアラビア・バーレーン)
カタール・サウジアラビア・バーレーンといったアラビア半島の国々は、アラビアプレートの安定した内部に位置しています。歴史的に大規模な地震の記録がほとんどなく、地盤が砂漠の岩盤で固く締まっているため、地殻変動の影響を受けにくい地帯です。
これらの国は、地震リスクが低い一方で、気温が50度近くに達する酷暑や砂嵐といった別の自然環境リスクがあります。防災の観点では、地震がないからといって「自然災害がない」わけではなく、リスクの種類が異なる点を理解しておく必要があります。
北欧諸国(ノルウェー・フィンランド・スウェーデン)
北欧のスカンジナビア半島を中心とした地域は、ユーラシアプレートの内側の安定域に位置しており、地震の発生がきわめて少ない地帯として知られています。フィンランドの地盤は花崗岩を主体とした硬質の岩盤で構成されており、地震の伝播が減衰しやすい特性があります。
北欧では洪水や豪雪などの自然災害は発生しますが、地震・津波・火山噴火のリスクは日本と比べると大幅に低い水準です。これらの国では耐震設計に関する規制が日本ほど厳格でない部分もあり、建築コストや都市計画の構造が根本的に異なっています。
東南アジア・シンガポール
シンガポールは赤道近くの安定した地盤の上に位置しており、プレート境界と活断層から地理的に遠く離れています。マレー半島南端の小さな島国ですが、スマトラ島沖のような大規模地震が発生した際でも、体感できるほどの揺れを受けることはほとんどありません。
ただし、インドネシアやフィリピンなど近隣諸国は環太平洋火山帯(「リング・オブ・ファイア」とも呼ばれる地震・火山の多発帯)に位置しており、東南アジア全体が地震リスクが低いわけではありません。移住先や渡航先の安全性は、国ではなく具体的な地域・都市単位で確認することが大切です。
オーストラリア大陸
オーストラリアはインド=オーストラリアプレートの安定した内部に位置しており、大陸全体として地震の発生頻度が低い地域です。内陸部では特に地震がまれで、歴史的にも大規模な地震による甚大な被害はほとんど記録されていません。
一方、山火事や洪水・干ばつといった気象・気候関連の自然災害リスクは高い水準にあり、地震以外のハザード(危険因子)については対策が必要です。どの国でも「地震がない=防災が不要」とはならない点を押さえておくとよいでしょう。
| 地域・国 | 地震リスクの低い理由 | その他の主な自然災害リスク |
|---|---|---|
| カタール・サウジアラビア | アラビアプレート安定内部 | 酷暑・砂嵐 |
| ノルウェー・フィンランド | ユーラシアプレート安定域 | 豪雪・洪水 |
| シンガポール | プレート境界から遠い安定地盤 | 熱帯豪雨(近隣国の地震影響は微小) |
| オーストラリア内陸部 | インド=オーストラリアプレート内部 | 山火事・干ばつ・洪水 |
- 地震リスクが低い国は中東・北欧・東南アジア一部・オーストラリアなどに集中しています
- 地震リスクが低くても、熱波・豪雪・洪水など別の自然災害が存在する場合があります
- 同じ国の中でも地域差があるため、都市・地域単位での確認が必要です
日本の地震リスクを客観的に把握する
地震が少ない国と比較することで、日本の地震リスクの特殊性が浮き彫りになります。内閣府の防災情報や気象庁のデータをもとに、日本在住者が知っておくべきリスクの全体像を整理します。
日本の地震発生頻度と規模
気象庁の統計では、日本では年間で震度1以上の地震が1,000〜2,000回程度発生しています(年によって変動があります)。マグニチュード7以上の大地震も数年に一度のペースで発生しており、これは世界平均と比較して非常に高い頻度です。
プレートが4枚交差する地質条件に加え、海溝型地震(プレートが沈み込む境界で発生)と直下型地震(陸地の活断層で発生)という2種類の地震リスクを同時に抱えているため、防災対策の範囲が広くなります。※最新の地震発生統計は気象庁公式ウェブサイトの「地震年表・地震統計」でご確認ください。
ハザードマップで自分の居住地を知る

地震が少ない国との比較を踏まえたうえで、日本在住者がまず取り組むべきことの一つが、居住地のハザードマップの確認です。国土交通省・国土地理院が運営するハザードマップポータルサイトでは、地震による揺れやすさ、津波浸水想定、液状化リスクなどを地図上で確認できます。
同じ日本国内でも、地盤や地域条件によって地震リスクの大きさは異なります。自分の家がどのようなリスク環境にあるかを把握することが、具体的な備えの起点になります。ハザードマップの見方が分からない場合は、各市区町村の防災担当窓口や、国土交通省の案内ページを参考にするとよいでしょう。
地震多発国に住む意味と備えの方向性
地震が少ない国の人々は、日常的に地震を意識した生活を送る必要がありません。しかし、日本では地震はいつ起きてもおかしくない日常リスクです。内閣府の防災情報では、「いつ・どこで大地震が起きても対応できる準備」を平時から行うことが基本方針として示されています。
地震リスクを下げることはできませんが、備えることで被害を減らすことはできます。食料・水・非常用電源の備蓄、家具の固定、避難経路の確認といった対策は、地震が多い国に住む人が講じられる最も現実的な防災行動です。
・ハザードマップポータルサイト(国土交通省・国土地理院):揺れやすさ・液状化・津波浸水を地図で確認
・各自治体の防災ページ:地元の被害想定・避難場所を確認
・気象庁の地震情報ページ:過去の地震データ・震源分布を確認
- 日本は年間1,000〜2,000回以上の有感地震が発生する世界有数の地震多発国です
- ハザードマップポータルサイトで居住地の具体的なリスクを地図で確認できます
- 地震リスクは下げられませんが、備えることで被害を最小化できます
- 海溝型と直下型、2種類の地震リスクを同時に考慮した備えが必要です
海外在住・渡航時の地震リスクと備え方
家族が海外に住んでいる方や、長期出張・移住を検討している方にとって、渡航先の地震リスクを把握しておくことは実用的な防災知識になります。地震が少ない国に移り住む場合でも、日本との連絡手段や現地の防災情報の収集方法はあらかじめ整えておく必要があります。
渡航先の地震リスクを調べる方法
渡航先の地震リスクは、外務省の海外安全情報ページや、現地の地質調査機関・防災省庁の公式情報で確認できます。地震が少ない国であっても、隣国で発生した大地震の影響を受けることがあるため、国単位ではなく地域・都市単位で調べることが大切です。
アメリカ地質調査所(USGS)のウェブサイトでは、世界各地の地震活動データをリアルタイムで公開しており、特定の地域の過去の地震頻度・規模を確認するのに役立ちます。※URLや利用方法は変更される場合があるため、最新情報はUSGS公式サイトでご確認ください。
地震が少ない国でも必要な備え
地震リスクが低い国に移住・滞在する場合でも、洪水・熱波・豪雪などの別の自然災害や、停電・断水などのインフラ障害に備えることは必要です。特に、電力インフラが不安定な国や地域では、ポータブル電源や飲料水の備蓄が実用的な対策になります。
日本からの海外在住者は、現地の緊急連絡先と在外公館(日本大使館・総領事館)の連絡先を事前に控えておくとよいでしょう。外務省の「たびレジ」への登録も、緊急時の情報収集手段として活用できます。
日本帰国後・訪日時の地震対応
地震が少ない国で育った方や長期滞在された方は、日本に来た際に地震への初期対応に慣れていない場合があります。地震発生時の基本行動(揺れを感じたらテーブルの下など頭を守れる場所へ移動し、揺れが収まるまで待機する)は、内閣府の防災情報や消防庁のリーフレットで確認できます。
訪日外国人向けの多言語防災情報は、内閣府・観光庁・各自治体のウェブサイトで公開されています。家族や知人が来日する際には、これらの情報を事前に共有しておくと安心です。
| 目的 | 確認先の情報源 |
|---|---|
| 渡航先の地震リスク確認 | 外務省 海外安全情報 / USGS公式サイト |
| 居住地(国内)のリスク確認 | ハザードマップポータルサイト(国土地理院) |
| 地震時の基本行動確認 | 内閣府 防災情報のページ / 消防庁リーフレット |
| 海外在住中の緊急情報 | 外務省 たびレジ / 在外公館連絡先 |
- 渡航先の地震リスクは国単位ではなく都市・地域単位で確認することが大切です
- 地震が少ない国でも、別の自然災害やインフラ障害への備えは必要です
- 外務省の「たびレジ」登録は海外滞在中の緊急情報収集に役立ちます
地震リスクの比較から学ぶ防災計画の見直し
地震が少ない国と日本のリスクを比較することで、日本在住者が「なぜこれほどの備えが必要なのか」を納得感を持って理解しやすくなります。防災計画の見直しには、リスクの根拠を知ることが出発点になります。
備蓄の量と内容を見直す視点
内閣府の防災情報では、最低3日分(できれば1週間分)の食料・飲料水・生活用品の備蓄が推奨されています。地震大国に住むという事実は、この備蓄推奨量の根拠に直結しています。地震が少ない国では推奨される備蓄量が日本ほど多くない場合もありますが、日本では大地震後に物流が数日〜1週間程度停止するリスクがあるため、この基準は合理的な目安です。
備蓄品の内容を見直す際は、自分の居住地のハザードマップで確認したリスクの種類(地震・津波・液状化など)に応じて優先順位をつけるとよいでしょう。例えば、津波浸水想定区域に住む場合は、持ち出し袋の中身と避難経路の確認を備蓄品と並行して整えておく必要があります。
停電リスクと電源確保の重要性
大地震の発生後は停電が長時間続く場合があります。気象庁や電力会社の情報では、大規模地震の際には送電網の復旧に数時間から数日かかることがあると示されています。地震が少ない国では停電リスクの想定が日本ほど高くないケースもありますが、日本では停電への備えを防災計画の一部として組み込んでおく必要があります。
ポータブル電源やモバイルバッテリーの備えは、スマートフォンでの情報収集・家族との連絡手段の確保という観点から、防災準備の基本の一つです。電源機器の使用可否や充電方法については、各メーカーの公式案内で事前に確認しておくと安心です。
防災計画を家族で共有する
防災計画は、作るだけでなく家族全員で共有することが大切です。内閣府の「防災対策推進検討会議」の資料でも、家族での避難先・連絡方法の事前確認が有効な備えとして示されています。特に家族の一部が海外在住の場合は、国内外での連絡手段を平時から決めておくとよいでしょう。
地震が少ない国に住む海外在住の家族には、日本の地震リスクを分かりやすく伝え、来日時の対応手順を事前に共有しておくと、もしものときの混乱を減らせます。避難場所・備蓄品の保管場所・緊急連絡先の3点を書き留めたシートを作成し、共有しておくと実用的です。
・内閣府 防災情報のページ:備蓄の量・避難行動の基準を確認
・ハザードマップポータルサイト:居住地の具体的なリスクを地図で確認
・気象庁:地震・津波情報のリアルタイム確認と過去データ
- 内閣府は最低3日分・できれば1週間分の食料・水の備蓄を推奨しています
- 大地震後の停電リスクに備えて、モバイルバッテリーやポータブル電源の準備が有効です
- 防災計画は家族全員で共有し、海外在住の家族にも日本のリスクを伝えておくとよいでしょう
- 居住地のリスクに応じた備蓄の優先順位をハザードマップで確認するとよいでしょう
まとめ
地震がない国は地球上に存在せず、地震リスクが低い国はプレートの安定域に位置するシンガポール・カタール・北欧諸国などが代表的です。日本は4枚のプレートが交差する世界でも特殊な地質環境にあり、地震リスクが構造的に高い地域です。
まず取り組んでほしいのは、ハザードマップポータルサイトで自分の居住地のリスクを地図で確認することです。地震の揺れやすさ・津波浸水想定・液状化リスクを把握したうえで、備蓄品と避難経路を整えることが具体的な防災の第一歩になります。
世界と比較することで、日本が備えを必要とする理由がより明確に見えてきます。地震リスクと正面から向き合い、家族の安全につながる準備を少しずつ積み上げていきましょう。
本記事の内容は、公的機関・メーカー公式情報などの一次情報をもとに整理したものです。実際の避難行動・食品の安全判断・機器の使用可否については、各自治体や公的機関の最新情報を必ずご確認ください。


