防災士の合格率は、日本防災士機構の公式発表によると2024年度で91.8%です。数字だけ見ると「簡単そう」と感じるかもしれませんが、この資格を取り巻く仕組みや防災知識としての価値は、数字だけでは語れない部分があります。
防災士になるには、試験の合格だけでなく、研修の受講と救急救命講習の修了という3つのステップが必要です。どのような準備が求められ、取得後にどう活かせるのか——防災への関心を持ち始めた段階から知っておくと、備えの方向性が定まりやすくなります。
この記事では、防災士の合格率の実態と試験の仕組み、取得までの流れ、そして防災準備との接点をまとめています。
防災士合格率の実態と合格基準を整理する
防災士資格取得試験の合格率は、毎年日本防災士機構が公式に発表しています。直近の数値と合格基準の仕組みを把握しておくと、試験準備の見通しが立ちやすくなります。
2024年度の合格率は91.8%
日本防災士機構の公式ページによると、2024年度の防災士資格取得試験合格率は91.8%でした。これは直近で公表されている最新の数値です。
2021年度以降、合格率は概ね91〜92%台で推移しており、高い水準が続いています。一方で、2019年・2020年には90%を下回る時期もありました。2019年4月に合格基準が引き上げられたことが、その背景にあります。
合格率が公式に公表されるのは直近1年分のみで、過去の数値は日本防災士機構の公式サイトでは非公開となっています。最新の合格率は、日本防災士機構の「防災に関する動向」ページでご確認ください。
合格基準は30問中24問以上正解
試験は3択式で全30問が出題されます。制限時間は50分で、マークシート形式です。合格基準は80%以上の正答、すなわち30問中24問以上の正解が必要です。
2019年4月の基準引き上げ前は、合格ラインが現在より低く設定されていました。基準が変わったことで、しっかりとした事前学習が合格のための前提となっています。
試験問題はすべて防災士教本の内容から出題されます。試験問題は試験後に持ち帰ることができないため、公式に過去問は公開されていません。教本を繰り返し読み、研修の履修確認レポートに取り組むことが基本的な準備方法です。
合格率が高い理由と注意点
合格率が高い背景には、試験が研修で学んだ内容から出題される点が挙げられます。養成研修講座でしっかり聴講し、教本を読み込んでいれば、対応できる水準の問題が中心です。
ただし、毎年一定数の不合格者が出ている事実もあります。91.8%の合格率は言い換えると、受験者の約8%が不合格ということです。準備不足のまま臨むと、基準の24問を下回るリスクがあります。
インターネットでは「合格率60%」と記載された情報も一部見られますが、日本防災士機構の公式発表とは異なる数値です。合格率に関する情報は、必ず日本防災士機構の公式サイトで確認するとよいでしょう。
試験形式:3択式・全30問・制限時間50分
合格基準:80%以上(24問以上正解)
2024年度合格率:91.8%(日本防災士機構公式)
過去問:公式非公開。教本・レポートが主な対策素材
- 合格率91.8%は最新の公式数値だが、毎年約8%は不合格になる
- 2019年4月に合格基準が引き上げられており、準備なしでの受験は危険
- 試験問題は防災士教本から全問出題されるため、教本の読み込みが中心
- 最新の合格率は日本防災士機構の公式サイトで毎年確認できる
防災士になるための3つのステップと費用
防災士の資格取得は、試験合格だけで完結しません。日本防災士機構が定めた3つの要件をすべて満たしたうえで認証登録申請を行う必要があります。費用と期間を事前に把握しておくと、計画が立てやすくなります。
ステップ1:防災士養成研修講座の受講
まず、日本防災士機構が認証した研修機関が実施する「防災士養成研修講座」を受講し、研修履修証明を取得します。研修は最低2日間以上の日程で行われ、防災士教本に示す21講目のうち12講目以上の会場研修が必要です。
研修では「災害発生のしくみ」「被害想定・ハザードマップ」「避難所の開設・運営」など、防災の基礎から実践的な対応まで幅広く学びます。会場研修で扱わない講目については、各研修機関が定めたレポートの提出が義務づけられています。
研修機関は全国に複数あり、自治体・大学・民間機関がそれぞれ主催しています。自治体が主催する無料または低価格の講座が開催される地域もあるため、お住まいの自治体のウェブサイトを確認するとよいでしょう。
ステップ2:防災士資格取得試験の合格
養成研修講座の最終日に、受講終了後ただちに試験が実施されます。試験の受験資格は研修履修証明を取得した者に限られます。試験受験料は3,000円(税込)です。
試験は研修で使用した防災士教本の内容から出題されるため、研修中のレポート作成や教本の読み込みが直接試験対策につながります。準備の仕方次第で、合格率の差が出やすい部分といえます。
ステップ3:救急救命講習の受講
防災士の認証登録申請には、心肺蘇生法やAEDの使い方を含む救急救命講習の修了証が必要です。日本赤十字社、消防署などの公的機関またはそれに準ずる団体が実施する講習が対象となります。
認証登録申請時点で、修了証の発行日が5年以内かつ発行者が定めた有効期限内であることが条件です。以前に受講済みの場合は、有効期限を確認してから申請に進みましょう。講習時間は3時間以上が目安です。
| 費用の種類 | 金額(税込) | 備考 |
|---|---|---|
| 防災士教本代 | 4,000円 | 研修申込時に別途購入 |
| 資格取得試験受験料 | 3,000円 | 日本防災士機構へ納付 |
| 認証登録申請料 | 5,000円 | 日本防災士機構へ納付 |
| 研修受講料 | 主催機関により異なる | 自治体主催は無料の場合も |
- 教本代・受験料・登録申請料の合計は12,000円(研修費は別途)
- 自治体主催講座には費用助成がある場合がある
- 救急救命講習の修了証は発行から5年以内のものが必要
- 申請から防災士証の到着まで2〜3か月程度かかるのが一般的
合格後の防災士証と認証登録の流れ
試験に合格してもすぐに防災士として認証されるわけではありません。必要書類の提出と認証登録の手続きを経て初めて防災士証が交付されます。登録の仕組みを知っておくと、取得後のスケジュールが見通せます。
認証登録申請の仕組み
3つのステップをすべて修了した後、日本防災士機構に「防災士認証登録申請」を行います。申請料は5,000円(税込)です。認証登録は毎月末に申請書の受理を締め切り、翌月末に「防災士認証状」と「防災士証(カード形式)」が発送されます。
申込のタイミングによっては、試験合格から防災士証の受取まで2〜3か月程度かかります。研修センターなどの民間機関で受講した場合は、手続きを代行してくれるケースが多いため、個別に確認するとよいでしょう。
防災士証の内容と有効期限
防災士証は免許証に近いサイズのカード形式で交付されます。更新制度はなく、一度取得すれば資格は失効しません。ただし、日本防災士機構は防災士に対してスキルアップへの継続的な取り組みを推奨しています。
防災士という資格は民間資格であり、特定の職業に就く権限を与えるものではありません。日本防災士機構の方針として、「自助・共助・協働」を原則とした地域防災活動のリーダーとして機能することが期待されています。
2026年3月末時点の認証者数
日本防災士機構の公式サイトによると、2026年3月末時点の防災士認証登録者数は累計356,514人です。制度が始まった2003年以降、毎年受験者が増加しており、近年の災害の多発を背景に取得者が急増しています。
自治体・地域の自主防災組織・福祉施設・職場など、さまざまな場面で防災士の配置・活用が広がっています。防災への関心が高まる中で、知識の整理と地域での実践をつなぐ資格として位置づけられています。
毎月末締切 → 翌月末に認証状・防災士証を発送
試験合格から証の受取まで:目安2〜3か月
有効期限なし(更新不要)
認証者数(累計):356,514人(2026年3月末時点)
- 試験合格後も申請手続きが必要で、防災士証の発行まで時間がかかる
- 更新制度はないが、スキルアップへの取り組みが推奨されている
- 累計35万人超が認証されており、地域・職場・施設で活用が広がっている
防災士の知識を家庭の備えに活かす視点
防災士は試験合格だけが目的ではなく、学んだ内容を日常の備えや地域活動に活かすことが本来の役割です。研修で扱う知識の多くは、家庭の防災準備にそのまま役立ちます。
研修で学ぶ内容と家庭の備えのつながり
防災士養成研修講座では、地震・津波・気象災害・土砂災害などの災害発生の仕組みから、ハザードマップの読み方、避難所の開設・運営、備蓄品の管理まで幅広い内容を学びます。
これらは防災士としての活動に必要な知識であると同時に、家庭の備えを具体化するための基礎でもあります。自宅の耐震補強や家具固定・備蓄の量の見直し・避難経路の確認など、日常的に実践できる行動に直結しています。
ハザードマップについては、国土交通省・国土地理院が運営する「ハザードマップポータルサイト」(disaportal.gsi.go.jp)でお住まいの地域のリスクを確認できます。
自助・共助の視点で備えを整える
防災士の基本理念である「自助・共助・協働」は、家庭の防災準備を考えるうえでも有効な枠組みです。自助とは自分と家族の身を守ること、共助とは地域や職場で助け合うことを指します。
家庭での備えを自助として整えたうえで、地域の自主防災組織や町内会の防災活動に関わることが共助につながります。防災士の知識は、こうした段階的な備えを体系的に進めるための地図になります。
資格取得を検討する前に確認しておくこと
防災士の資格取得を検討している場合、まず研修機関と日程を調べることが第一歩です。研修は2日間以上の集合研修が必要なため、仕事や育児など日常スケジュールとの調整が必要になります。
自治体が主催する講座では費用助成を設けている場合があります。お住まいの自治体のウェブサイトで「防災士」「養成講座」と検索すると、助成制度や開催情報を確認できます。費用・日程・助成の有無を確認してから申込先を選ぶとよいでしょう。
防災士資格の取得を目的にせず、研修で学ぶ内容そのものを防災知識として活用する、という考え方も、防災への関心を持ち始めた段階では有効です。
| 防災士養成研修で学ぶ主な内容 | 家庭の備えへの活用例 |
|---|---|
| 地震・津波・気象・土砂の仕組み | ハザードマップで自宅リスクを把握する |
| ハザードマップの読み方 | 避難ルート・避難先を事前に確認する |
| 備蓄品の管理 | ローリングストックで食品・水を継続管理 |
| 避難所の開設・運営 | 近隣の指定避難所の位置と収容状況を把握 |
| 心肺蘇生法・AED操作 | 家族と一緒に救急救命講習を受講する |
- 研修で学ぶ知識は家庭の備えに直接活用できる内容が多い
- 自治体主催の講座には費用助成がある場合があり、事前確認が必要
- ハザードマップポータルサイトで自宅周辺のリスクを確認できる
- 資格取得の前段階として、研修内容を防災知識として活かす視点も有効
防災士資格に関するよくある疑問
防災士に関心を持ったばかりの段階では、資格の性質や取得後の義務について疑問を持つ方も少なくありません。よく見られる疑問点を整理しておきます。
防災士は国家資格ではない
防災士は、認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)の日本防災士機構が認証する民間資格です。国家資格ではないため、特定の職業に就くための必須資格ではありません。
自治体が防災士の取得を推奨したり費用助成を行ったりするケースがあるため、公的な資格と誤解されることがありますが、位置づけは民間の検定資格です。防災士証は日本防災士機構から交付されます。
資格取得後に義務はあるか
防災士資格を取得したからといって、特定の活動を義務づけられるわけではありません。更新制度もないため、資格の維持に費用はかかりません。
ただし、日本防災士機構はスキルアップへの継続的な取り組みを推奨しており、研修会への参加や防災活動への関わりが期待されています。あくまでも努力目標としての位置づけです。
年齢制限や受験資格はあるか
防災士資格には年齢制限の定めはありません。日本防災士機構の公式サイトによると、小中学生でも試験に合格すれば防災士になれると案内されています。ただし、研修の受講が前提となるため、研修機関の受講条件を個別に確認する必要があります。
消防吏員・警察官・自衛官・消防団員・赤十字救急法救急員の認定者など一定の実績を持つ方には、一部の要件が免除される「特例制度」があります。詳細は日本防災士機構の「特例各種ご案内」ページでご確認ください。
・国家資格ではなく民間資格(日本防災士機構が認証)
・取得後に活動義務はない(努力目標として推奨)
・年齢制限なし(研修機関の条件は要確認)
・特例制度あり(消防・警察・自衛官等の経験者向け)
- 防災士は民間資格であり、特定職種への就業権限を持つものではない
- 資格取得後の活動義務はないが、スキルアップへの取り組みが推奨されている
- 年齢制限はないが、研修機関ごとの受講条件を事前に確認する必要がある
- 一定の実績を持つ方向けの特例制度が設けられている
まとめ
防災士の合格率は2024年度91.8%で、試験は3択式30問・合格基準80%以上と、研修内容をしっかり学べば対応できる水準です。ただし、試験だけで資格が完結するわけではなく、養成研修・救急救命講習・認証登録申請の3ステップをすべて経る必要があります。
まず取り組みやすい第一歩として、お住まいの自治体ウェブサイトで防災士養成講座の開催情報や費用助成の有無を確認してみてください。自治体主催の講座は無料か低価格で受講できる場合があり、ハードルを下げるきっかけになります。
防災士の資格取得はゴールではなく、備えを体系的に深めるための入口です。資格の取得を検討している段階でも、研修で扱う防災知識を日常の備えに活かす視点を持つことが、家庭の安全につながるはじめの一歩になります。
本記事の内容は、公的機関・メーカー公式情報などの一次情報をもとに整理したものです。実際の避難行動・食品の安全判断・機器の使用可否については、各自治体や公的機関の最新情報を必ずご確認ください。

