qgis quickdem4jpで自宅周辺の地形リスクをつかむ|見落としがちな標高の盲点

qgis quickdem4jpを使い防災対策として地形や浸水リスクを調べる女性のイメージ 災害知識・ハザードと計画

地形を「見える化」することが、身近な災害リスクを理解する第一歩になります。国土地理院が無償公開している数値標高モデル(DEM)を、QGISプラグイン「QuickDEM4JP」で読み込むと、自宅周辺の地形的な特徴を自分で地図上に表示できます。標高の低い場所・傾斜が急な場所・周囲と比べて窪んでいる場所は、浸水・土砂災害・液状化のリスクと深く関係しています。

ハザードマップポータルサイト(国土交通省・国土地理院)では、洪水・土砂・高潮など複数のハザード情報が重ねて確認できますが、「なぜその場所が危険なのか」という地形的な背景は、標高データを自分で可視化してはじめて実感できることがあります。QGISは無料のオープンソースGISソフトウェアで、QuickDEM4JPはMIERUNE株式会社が開発・無償提供しているQGIS用プラグインです。

この記事では、QuickDEM4JPを使って国土地理院の標高データをQGISに取り込む手順と、防災・ハザード把握への活用方法を整理します。地図ソフトの操作に慣れていない方でも、手順を一つずつ確認しながら進められる内容にしています。

QuickDEM4JPとQGISの基本を押さえる

QGISとQuickDEM4JPが何をするツールなのか、防災の文脈から整理しておくと、操作の目的が理解しやすくなります。どちらも無料で使えるオープンソースのソフトウェア・プラグインであり、専門的なGIS知識がなくても段階的に使い始めることができます。

QGISとは何か

QGISは、地図データを表示・分析・編集できる無料のGISソフトウェアです。GIS(地理情報システム)とは、位置情報を持つデータを地図上で扱うためのシステムを指します。

Windows・macOS・Linuxに対応しており、QGISの公式サイト(qgis.org)から無料でダウンロードできます。ハザードマップのデータや標高データなど、複数の地図レイヤーを重ね合わせて表示する用途に向いています。

商用GISソフトに比べて操作に学習コストがかかる面もありますが、防災用途では「自宅周辺の地形を把握する」という限定的な目標に絞れば、基本操作だけで十分活用できます。

QuickDEM4JPとは何か

QuickDEM4JPは、国土地理院の基盤地図情報ダウンロードサービスで配布されているDEMファイル(XML形式またはZIP形式)を、QGISで直接扱えるGeoTIFF形式やTerrain RGB形式に変換するQGISプラグインです。MIERUNE株式会社が開発し、無償で公開しています。

国土地理院のDEMファイルはXML形式で提供されており、そのままではQGISに読み込めません。QuickDEM4JPを使うことで、この変換作業をQGIS上で完結させられます。

2024年8月にリリースされたバージョン1.1.0では、1mメッシュの大容量DEMファイルにも対応し、出力TIFFの最大サイズが32,000×32,000ピクセルまで拡張されています。最新バージョンはQGISのプラグイン公式リポジトリ(plugins.qgis.org)で確認できます。

数値標高モデル(DEM)と防災の関係

数値標高モデル(DEM:Digital Elevation Model)とは、地表面の高さを格子状のメッシュデータとして記録したものです。国土地理院では5mメッシュ・10mメッシュ・1mメッシュのDEMを基盤地図情報として無償公開しています。

標高データを地図上で可視化すると、低地・谷地形・急傾斜地などの地形的特徴が分かります。これらは洪水・土砂災害・液状化といった災害リスクと密接に関係しており、ハザードマップを読む際の背景知識として役立ちます。

5mメッシュDEMは航空レーザー測量データをもとに作成されており、建物や植生の影響を除いた「裸地面」の標高を表しています。自宅周辺の微地形を把握するには、5mメッシュ(5Aまたは5B)のデータが実用的です。

【DEMメッシュ種別の目安】
5mメッシュ(5A):航空レーザー測量。精度が高く防災用途に最適
5mメッシュ(5B):写真測量。5Aが整備されていない地域をカバー
10mメッシュ(10B):地形図の等高線から作成。広域確認向き
1mメッシュ:超高精度。ファイルサイズが大きく上級者向き
  • QGISは無料のGISソフトで、地図レイヤーの重ね合わせ・地形分析に使える
  • QuickDEM4JPはDEMのXMLファイルをGeoTIFFに変換するQGISプラグインで無償利用できる
  • 国土地理院のDEMは5mメッシュ・10mメッシュ・1mメッシュがあり、防災用途には5mメッシュが実用的
  • 最新版(v1.1.0)は1mメッシュの大容量ファイルにも対応している

DEMデータのダウンロード手順

国土地理院の基盤地図情報ダウンロードサービスからDEMを取得するには、利用者登録が必要です。操作の流れを事前に把握しておくと、ダウンロードがスムーズに進みます。

利用者登録とログイン

基盤地図情報ダウンロードサービス(fgd.gsi.go.jp/download)は利用者登録制です。メールアドレスでアカウントを作成し、ログインした状態でデータを選択・ダウンロードします。

登録・利用は無料です。登録後すぐにダウンロードできます。利用規約や申請が必要なケースについては、国土地理院の「地図の利用手続ナビ」で確認できます。

なお、ダウンロードしたDEMデータを地図や記事等に利用する際は、出典として国土地理院の表記が必要です。詳しい表記方法は国土地理院公式サイトの「出典の記載」ページを参照してください。

ダウンロード対象エリアの選択

ログイン後、トップページの「数値標高モデル」から「ファイル選択へ」をクリックします。画面左の「検索条件指定」でメッシュ種別(5Aまたは5B等)を選択し、「選択方法指定」で地図上クリック・市区町村選択・地方区分選択のいずれかを選んでエリアを絞り込みます。

市区町村単位で選択すると、指定エリアに該当するメッシュが自動的にリストアップされます。都市部では5Aデータが整備されている地域が多いですが、地域によっては5Bのみの場合もあります。画面上でデータの整備状況を確認してから選択するとよいでしょう。

ダウンロードリストに追加したら「ダウンロードファイル確認へ」をクリックし、必要なファイルにチェックを入れて一括ダウンロードします。ファイルはZIP形式で保存されます。

ダウンロード後のファイル管理

qgis quickdem4jpを使った地形確認や防災リスク分析を表すイメージ画像

ダウンロードされるZIPファイルには、XML形式の標高データが複数含まれています。解凍すると多数のXMLファイルが生成されるため、分かりやすい場所にフォルダを作成して整理しておくと後の操作が楽です。

QuickDEM4JPはZIPのまま読み込む設定と、解凍後のXMLを読み込む設定の両方に対応しています。ただし、PC環境によってはZIPのまま処理するとエラーが出る場合があるため、解凍したXMLファイルのフォルダを指定する方法が安定しやすいです。

複数のメッシュをまとめて変換する場合は、同じフォルダ内に必要なXMLファイルをまとめて配置しておくと、一括変換が可能です。

操作内容
利用者登録メールアドレスで無料登録。登録直後から利用可
メッシュ選択5Aを優先。整備済みエリアは画面上で確認できる
ダウンロード形式ZIP圧縮(内部にXMLファイルが複数含まれる)
解凍後の管理専用フォルダに整理しておくと一括変換が楽
  • 基盤地図情報ダウンロードサービスは無料・要登録
  • メッシュ種別は5A(航空レーザー)を優先し、整備状況を画面で確認する
  • ダウンロード後はXMLを専用フォルダに整理し、QuickDEM4JPに読み込みやすくしておく
  • データ利用時は国土地理院の出典表記が必要

QuickDEM4JPのインストールとGeoTIFF変換手順

QuickDEM4JPのインストールはQGISのプラグイン管理画面から数分で完了します。変換手順も設定項目が少なく、手順を一つずつ確認すれば初めてでも操作できます。

プラグインのインストール方法

QGISを起動し、メニューバーの「プラグイン」から「プラグインの管理とインストール」を開きます。左タブで「すべて」を選択し、検索欄に「QuickDEM4JP」と入力すると該当プラグインが表示されます。

プラグイン名をクリックして選択し、右下の「インストール」ボタンをクリックするとインストールが完了します。インストール後、QGISのツールバーにXMLアイコンが追加されます。このアイコンがQuickDEM4JPの起動ボタンです。

インストールには安定したインターネット接続が必要です。QGISのバージョンは3.16以上が必要で、3.99までの動作が確認されています。使用しているQGISのバージョンが古い場合は、QGISの公式サイト(qgis.org)から最新版に更新しておくとよいでしょう。

QuickDEM4JPの操作と変換設定

ツールバーのXMLアイコンをクリックするか、メニューバーの「プラグイン」から「Quick_DEM_for_JP」を選択してプラグインを起動します。起動するとダイアログが開きます。

「DEM」の右にある「…」ボタンをクリックし、先ほど準備したXMLファイルまたはZIPファイルのフォルダを指定します。「出力設定」では「GeoTIFF」を選択し、出力先フォルダを指定します。「アルゴリズムの終了後、QGIS上で出力ファイルを開く」にチェックを入れておくと、変換完了後に自動でQGIS上に標高データが表示されます。

設定が完了したら「OK」をクリックします。処理が完了すると「処理が完了しました」のメッセージが表示され、QGISのレイヤーパネルにGeoTIFFが追加されます。複数のメッシュをまとめて変換する場合は、ファイルが多いほど処理時間が長くなります。

GeoTIFFとTerrain RGBの違いと選び方

QuickDEM4JPの出力形式にはGeoTIFFとTerrain RGBの2種類があります。QGISで標高データを分析・可視化する目的には、GeoTIFFが適しています。GeoTIFFは各ピクセルに実際の標高値(メートル単位)が記録されており、陰影図・傾斜図・標高段彩図の作成に直接使えます。

Terrain RGBはR・G・Bの各チャンネルに標高情報をエンコードした形式で、ウェブ地図(Mapboxなど)での利用を想定したフォーマットです。QGISでそのまま標高分析に使うには追加処理が必要なため、防災用の地形把握を目的とする場合はGeoTIFFを選ぶのが確実です。

出力したGeoTIFFはQGISのレイヤープロパティから表示スタイルを変更できます。「シンボロジ」タブの「レンダリングタイプ」で「擬似カラー」を選ぶと標高を色分け表示でき、「陰影図」を選ぶと地形の起伏が視覚的に分かりやすくなります。

【出力形式の選び方】
GeoTIFF:QGISでの標高分析・陰影図・傾斜図の作成に使う場合に選ぶ
Terrain RGB:ウェブ地図向け。QGISでの直接分析には追加処理が必要
迷ったらGeoTIFFを選んでおくと後の操作に困りにくい
  • プラグインインストールはQGISの「プラグインの管理とインストール」から検索して実行する
  • 動作対象はQGIS 3.16以上
  • 防災用の地形把握にはGeoTIFF出力を選ぶ
  • 「処理完了後に開く」にチェックすると変換後の地図が自動表示される

標高データから地形リスクを読み取る方法

GeoTIFFとして読み込んだ標高データは、表示スタイルを変えることで地形リスクの把握に役立てられます。陰影図・傾斜図・段彩図の3つを使い分けると、災害種別ごとのリスクが視覚的につかみやすくなります。

陰影図で地形の起伏を把握する

陰影図(ヒルシェード)は、仮想的な光源から地形に影を当てた表示方法で、山や谷の起伏が視覚的に分かりやすく表現されます。QGISのレイヤープロパティ「シンボロジ」から「陰影図」を選択し、高度・方位角を調整して作成できます。

陰影図では、周囲より低い「窪地」や水が集まりやすい「谷地形」が暗く見える場合があり、浸水リスクの高い場所を大まかに把握するのに役立ちます。都市部では建物に囲まれた低地や暗渠(地下化した水路)が残っている場所が、過去の浸水実績と一致するケースがあります。

陰影図単体では標高値の大小が分かりにくいため、次に説明する標高段彩図と重ね合わせて使うと情報が補完されます。QGISでは2つのレイヤーを重ねて透過率を調整することで、陰影段彩図を作成できます。

傾斜図で土砂災害リスクの高い場所を確認する

傾斜図はDEMから地表面の傾斜角度を計算して表示したもので、急傾斜地の分布を把握できます。QGISのメニュー「ラスタ」→「地形解析」→「傾斜」から作成できます。

国土交通省のハザードマップポータルサイトで公開されている土砂災害警戒区域は、急傾斜地・渓流沿いなど傾斜が大きい場所に重なることが多くなります。傾斜図と土砂災害ハザードマップを重ねて表示すると、「なぜその場所が警戒区域なのか」を地形から確認できます。

土砂災害に関する規制区域の確定は各都道府県が行っており、土砂災害警戒情報は気象庁と都道府県が共同で発表します。傾斜図の情報だけで危険・安全の判断はできません。必ず自治体・国土交通省・気象庁の公式情報と合わせて確認してください。

ハザードマップポータルサイトと重ね合わせる

QGISではWMSやXYZタイルを使って外部地図サービスを背景として追加できます。国土地理院が提供する地理院タイルや、ハザードマップポータルサイトのデータを背景に加えると、標高データとハザード情報を同一画面で比較できます。

ハザードマップポータルサイト(disaportal.gsi.go.jp)では、洪水・内水・土砂・高潮・津波・火山のハザード情報をブラウザ上で重ね表示できます。QGISで標高を把握したうえでこのサービスを参照すると、「なぜ自宅周辺が洪水リスクありと判定されているか」という地形的な根拠が理解しやすくなります。

ハザードマップの情報は市区町村が更新・公開するものと、国が整備するものがあります。最新のハザード情報は各自治体のウェブサイトまたはハザードマップポータルサイトで確認してください。

【地形表示の使い分けの目安】
陰影図:地形の起伏・窪地・谷地形の把握に使う
傾斜図:急傾斜地・土砂災害リスクの分布確認に使う
標高段彩図:標高の高低を色で確認する場合に使う
重ね合わせ:複数レイヤーを透過させて組み合わせると情報が補完される
  • 陰影図で地形の起伏・窪地を把握し、浸水リスクの高い場所の当たりをつけられる
  • 傾斜図でQGISの「地形解析」から急傾斜地の分布を確認できる
  • ハザードマップポータルサイトと重ねると、ハザード判定の地形的背景が理解しやすくなる
  • 傾斜図・陰影図だけで安全・危険の最終判断はしない。必ず公式ハザード情報と照合する

防災計画への活用と確認すべき公式情報

標高データと地形可視化は、防災計画の材料として使えますが、最終的な避難判断には自治体・公的機関の公式情報が欠かせません。ここでは、地形把握の結果をどう防災準備に結びつけるかを整理します。

地形把握の結果を避難計画に結びつける

QGISで作成した陰影図や傾斜図は、あくまで地形の特徴を視覚化したものです。「浸水しやすい形状の低地にある」「急傾斜地の近くに位置する」といった地形的な傾向を把握したうえで、自治体が発行するハザードマップの内容と照合することで、避難経路・避難場所の選定に根拠が加わります。

内閣府の「避難情報に関するガイドライン」では、避難の判断は気象情報・避難情報・ハザードマップの3点を組み合わせることが基本とされています。地形データはこの判断を補強する背景情報として位置付けるとよいでしょう。

自宅・職場・学校など複数の拠点について地形を確認しておくと、それぞれの場所に応じた避難行動を事前に整理できます。

自治体のハザードマップと組み合わせる際の注意点

各市区町村のハザードマップは、DEMによる地形解析だけでなく、河川の流量計算・過去の浸水実績・地盤調査などの複合的な情報をもとに作成されています。標高が高い場所でも特定条件下で浸水リスクがある場合があり、逆に標高が低くても堤防等の整備状況によってリスクが異なります。

自治体のハザードマップは定期的に更新されます。国土交通省のハザードマップポータルサイト(disaportal.gsi.go.jp)で最新版を確認してください。紙版のハザードマップが古い場合は、ウェブ版の方が新しい情報が反映されていることがあります。

避難行動の判断については、気象庁の避難情報・警戒レベル(レベル1〜5)の基準を平常時から理解しておくことが大切です。警戒レベルの詳細は気象庁の公式ウェブサイトで確認できます。

地形データ活用時の限界と補足確認先

QuickDEM4JPで読み込めるDEMは地表面の標高を示すものであり、地盤の強度・液状化リスク・地下構造は含まれていません。液状化リスクについては、各都道府県や市区町村が作成した「液状化ハザードマップ」を別途確認する必要があります。

また、標高データは測量時点の地形を記録したものであり、その後の地形変化(宅地造成・河川改修・地盤沈下等)が反映されていない場合があります。データの作成年月は国土地理院の基盤地図情報ダウンロードサービスのページで確認できます。

地形データを防災計画の参考にする場合は、得られた情報を自治体の防災担当窓口に相談する、または地区の防災訓練・防災マップ作成活動に参加することで、地域特有のリスクを補完できます。

確認項目確認先
洪水・土砂・高潮・津波ハザードハザードマップポータルサイト(国土交通省・国土地理院)
警戒レベル・避難情報の基準気象庁公式ウェブサイト
液状化ハザード各都道府県・市区町村の液状化ハザードマップ
避難場所・避難経路各市区町村のハザードマップ・自治体防災ページ
DEMデータの作成年月国土地理院 基盤地図情報ダウンロードサービス
  • 地形データは避難判断の補強材料であり、最終判断は自治体・気象庁の公式情報に基づく
  • 液状化・地盤強度はDEMでは確認できない。別途液状化ハザードマップを参照する
  • ハザードマップは定期的に更新されるため、常に最新版を確認する習慣をつけるとよい

まとめ

QGISとQuickDEM4JPを使えば、国土地理院の無料標高データから自宅周辺の地形的なリスクを自分で可視化できます。陰影図・傾斜図・段彩図を組み合わせることで、浸水しやすい低地や土砂災害リスクのある急傾斜地を地図上で確認できるようになります。

まず最初に試すとよい手順は「基盤地図情報ダウンロードサービスに登録して自宅周辺の5mメッシュDEMを取得し、QuickDEM4JPでGeoTIFFに変換してQGISに表示する」という一連の流れです。操作に慣れてきたら、ハザードマップポータルサイトのデータと重ね合わせる応用へ進んでいけます。

地形を把握することは、いざというときに動ける準備につながります。今日のうちに基盤地図情報ダウンロードサービスへのアカウント登録だけでも済ませておくと、次のステップに進みやすくなります。

本記事の内容は、公的機関・メーカー公式情報などの一次情報をもとに整理したものです。実際の避難行動・食品の安全判断・機器の使用可否については、各自治体や公的機関の最新情報を必ずご確認ください。

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