南海トラフ被害予想の都道府県一覧|見落としがちな内陸リスク

南海トラフ被害予想の都道府県一覧を確認しながら、内陸リスクへの備えを進める男性の防災シーン 災害知識・ハザードと計画

南海トラフ地震は、日本で起こりうる最大規模の地震のひとつです。太平洋沿岸だけの問題と思われがちですが、内閣府の被害想定では30都府県にわたる広範囲に深刻な影響が及ぶとされています。自分の都道府県が対象に入っているかどうか、また、どのようなリスクが想定されているかを事前に把握しておくことが、防災準備の第一歩です。

内閣府は2013年(平成25年)に南海トラフ巨大地震の被害想定を発表し、その後も随時見直しを行っています。死者数・建物被害・津波到達時間・停電や断水の規模など、多岐にわたるデータが公開されています。これらの数字は、どこに住んでいても「自分ごと」として読む必要があります。

この記事では、都道府県ごとの被害想定の概要を整理し、沿岸部と内陸部それぞれで注意すべきリスクの違いについて解説します。まず自分の地域がどの被害想定に該当するかを確認し、備えの優先順位を考えるための参考にしてください。

南海トラフ地震の被害想定とはどのようなものか

内閣府が公表している南海トラフ巨大地震の被害想定は、「最大クラス」の地震・津波が発生した場合を前提に算出されたものです。現実に起こりうる最悪のシナリオを想定し、どこでどれほどの被害が生じうるかを都道府県・市区町村単位で示しています。

想定の前提:マグニチュード9クラスの地震

内閣府の被害想定は、マグニチュード9.0〜9.1クラスの地震を前提にしています。震源域は静岡県沖から九州東方沖にかけての広大なプレート境界で、過去の東日本大震災(M9.0)に匹敵する規模です。

この規模の地震が発生した場合、強い揺れは数分間継続し、震度6強〜7が広範囲に分布します。揺れによる直接被害に加え、津波・火災・液状化・土砂災害が複合的に発生するとされています。

被害想定の主な指標と見方

内閣府の被害想定では、以下のような指標が都道府県ごとに示されています。死者数・行方不明者数は「冬の深夜・早期避難なし」などの条件別に複数のケースで算出されています。

主な被害想定の指標
・死者数/行方不明者数(条件別複数ケース)
・全壊・半壊建物棟数
・津波浸水面積・最大波高・到達時間
・停電・断水・通信途絶の規模と継続期間

想定はあくまで「最大クラス」の目安

被害想定の数字はあくまで特定の条件のもとでの試算です。実際の被害は、地震発生時刻・季節・風向き・避難行動の速さによって大きく変わります。「想定より小さければ安心」という判断は危険で、最大クラスを念頭に準備しておくことが基本です。

内閣府防災情報のページでは、被害想定の計算根拠や条件の詳細が公開されています。数字の背景を理解するうえで参照するとよいでしょう。

  • 被害想定はM9クラスの最大ケースをもとに算出されている
  • 死者数は条件別(季節・時刻・避難行動)に複数ケースが示されている
  • 揺れ・津波・火災・液状化が複合して起きることを前提にしている
  • 数字は目安であり、実際の被害は条件次第で変わる

被害が想定される主な都道府県の一覧

内閣府の被害想定では、30都府県が被害対象地域として整理されています。太平洋側の沿岸県だけでなく、内陸部の府県でも強い揺れや火災・インフラ被害が想定されています。以下に主要な都道府県の被害概要を整理します。

死者数が特に多く想定されている県

内閣府の2013年想定(最大ケース)では、死者数が最も多く見積もられているのは静岡県・高知県・徳島県・愛知県・三重県・大阪府などです。とりわけ高知県・徳島県・静岡県は津波到達が早く、避難の遅れが直接的に死者数に影響するとされています。

高知県では最大約4万9,000人、静岡県では最大約10万9,000人(いずれも早期避難なし・冬深夜想定)という試算が示されており、この数字は早期避難の有無によって大幅に変わります。早期避難が徹底された場合、死者数を8割以上減らせる可能性があるとも内閣府は指摘しています。

津波リスクが高い太平洋沿岸の県

津波の浸水リスクが特に高いとされているのは、以下の府県です。到達時間が数分単位の地点も含まれており、揺れを感じたらすぐ避難することが前提になっています。

都道府県最大津波高の目安主なリスク
高知県34m超(黒潮町付近)津波・浸水・孤立集落
静岡県33m超(静岡市付近)津波・建物倒壊・火災
徳島県26m超津波・浸水・河川遡上
三重県27m超津波・港湾被害・断水
和歌山県31m超津波・早期到達(数分)
愛媛県20m超津波・沿岸集落の孤立
宮崎県・大分県14〜20m台津波・液状化・停電

※最大津波高は内閣府「南海トラフ巨大地震の被害想定(第二次報告)」をもとにした概算です。市区町村単位での詳細は、内閣府防災情報のページでご確認ください。

強い揺れが想定される内陸・近畿・東海の府県

津波の直撃がない内陸部でも、震度6強〜7の揺れが広範囲に及ぶことが想定されています。大阪府・愛知県・岐阜県・奈良県・京都府などでは、建物倒壊・火災・液状化による被害が主なリスクです。

大阪府では最大約1万3,000棟の建物全壊、愛知県でも大規模な建物被害が想定されています。沿岸から離れているから安全、とは言えない点がこのデータから読み取れます。

  • 死者数が多い県は高知・静岡・徳島・愛知・三重・大阪など
  • 津波到達が早い地域では揺れを感じたら即避難が原則
  • 内陸の府県でも震度6強〜7の揺れと建物被害が広範囲に及ぶ
  • 早期避難の徹底で死者数を大幅に減らせる可能性がある

沿岸部と内陸部で異なるリスクの種類

南海トラフ地震のリスクは、沿岸部と内陸部で性質が大きく異なります。津波を想定した備えと、揺れ・火災・ライフライン断絶を想定した備えは、優先順位が変わります。自分の居住地がどちらに近いかを整理しておくと、備えの方向性が絞りやすくなります。

沿岸部の最大リスクは津波と浸水

太平洋沿岸の低地・河川沿いに住む人にとって、最大のリスクは津波と浸水です。場所によっては地震発生後2〜3分で津波が到達するとされており、揺れが収まるのを待つ余裕はありません。

「強い揺れを感じたらすぐ高台へ」という行動原則は、気象庁・各自治体が繰り返し周知しています。避難場所・避難経路は平常時に確認し、夜間・悪天候でも迷わず行動できる状態にしておく必要があります。

沿岸部で事前に確認しておくべき3点
・最寄りの津波避難場所・避難ビルの場所と所要時間
・自宅・職場・学校それぞれからの避難経路
・夜間・就寝中を想定した避難動線(靴・懐中電灯の配置)

内陸部の主なリスクは揺れ・火災・ライフライン断絶

内陸部では津波よりも、強い揺れによる建物倒壊・家具の転倒・火災が主なリスクです。阪神・淡路大震災(1995年)でも、多くの死者が建物倒壊と火災によるものでした。

南海トラフ地震では、内陸でも長周期地震動(ゆっくりとした大きな揺れ)が高層建物に影響を与える可能性があるとされています。マンション高層階に住む人は、この点も備えの視点に入れておくとよいでしょう。

ライフライン断絶は沿岸・内陸を問わず長期化する

内閣府の被害想定では、停電・断水・ガス供給停止が広域かつ長期にわたることが示されています。断水は最大で3週間以上継続する地域もあるとされており、飲料水・生活用水の備蓄は沿岸・内陸を問わず不可欠です。

通信障害・道路寸断による孤立も想定されており、自宅で一定期間を自給自足できる備えが求められます。最低3日分・できれば1週間分以上の水・食料・医薬品を備蓄しておくことが、内閣府の防災ガイドラインでも推奨されています。

  • 沿岸部は津波到達が早く、揺れ後すぐの避難行動が生死を分ける
  • 内陸部は揺れ・建物倒壊・火災が主なリスク
  • 長周期地震動はマンション高層階への影響が指摘されている
  • 断水・停電は沿岸・内陸を問わず長期化する可能性がある

自分の都道府県・市区町村のリスクを確認する方法

南海トラフ被害予想の都道府県一覧と見落とされがちな内陸部の災害リスクを示す防災イメージ

被害想定の都道府県別データは公開されていますが、実際に自分が住む市区町村レベルの詳細リスクは、各自治体のハザードマップや地域防災計画で確認することになります。国が示す広域想定と、地元自治体が出す詳細情報を組み合わせることで、より正確な把握ができます。

内閣府の被害想定資料の見方

内閣府防災情報のページでは、「南海トラフ巨大地震の被害想定」として都道府県別の詳細データが公開されています。死者数・建物被害・ライフライン被害などの表が項目別に整理されており、自分の都道府県の数値を確認できます。

資料は複数の「ケース」に分かれており、「冬深夜・早期避難なし」など条件が異なります。最悪ケースと早期避難ケースの両方を見ることで、避難行動の効果も把握できます。

ハザードマップポータルサイトで地図を確認する

国土交通省・国土地理院が運営するハザードマップポータルサイト(disaportal.gsi.go.jp)では、住所を入力するだけで自宅周辺の津波浸水想定・土砂災害警戒区域・洪水浸水想定区域などを地図上で確認できます。

南海トラフ地震の津波浸水想定図も掲載されており、自宅や避難場所がどのゾーンに位置するかを視覚的に把握できます。自治体が独自に作成したハザードマップと併せて確認するとより精度が上がります。

リスク確認の手順(3ステップ)
1. 内閣府防災情報のページで都道府県別被害想定を確認する
2. ハザードマップポータルサイトで自宅周辺の浸水・土砂リスクを確認する
3. 居住する市区町村の地域防災計画・避難場所情報を自治体サイトで確認する

ミニQ&A:よくある疑問

Q. 内陸の県でも南海トラフ地震で大きな被害が出るの?
A. はい、大阪・愛知・岐阜・奈良などでも震度6強〜7の揺れが想定されており、建物倒壊・火災・ライフライン断絶による被害が見込まれています。津波の直撃がなくても、備えは必要です。

Q. 被害想定の数字はどれくらい信頼できる?
A. 内閣府の被害想定は特定の条件下での試算であり、実際の被害は変わります。ただし、最大クラスを念頭に準備するための目安として、公式の一次情報として参照する価値があります。

  • 内閣府防災情報のページで都道府県別の詳細データを確認できる
  • ハザードマップポータルサイトで自宅周辺のリスクを地図で把握できる
  • 条件別の複数ケースを比較することで避難行動の効果も読み取れる
  • 自治体の地域防災計画と組み合わせると、より実践的な備えにつながる

被害想定をもとに何を備えるべきか

都道府県別の被害想定を把握したうえで、次に考えるべきは具体的な備えの内容です。どの地域に住んでいても共通して必要な備えと、居住地のリスクに応じて優先すべき備えがあります。ここでは、被害想定に基づいた優先順位の整理を示します。

全地域共通で最優先の備え

断水・停電・通信障害は、南海トラフ地震では沿岸・内陸を問わず長期化が想定されています。内閣府のガイドラインでは、最低3日分・できれば1週間分以上の水・食料・医薬品の備蓄が推奨されています。

水は1人1日3リットルを目安に備蓄します。7日分であれば1人あたり21リットルが目安です。ペットボトル飲料水の定期的な買い替え(ローリングストック)が、日常的に備蓄を維持する方法として実践しやすいでしょう。

津波リスクがある地域で優先すること

太平洋沿岸の低地・河川沿いに住む場合、最優先事項は「いつでも即座に避難できる状態を作ること」です。持ち出し袋の準備・避難経路の確認・家族との集合場所の決定が基本セットになります。

夜間就寝中に地震が起きた場合を想定し、玄関・ベッドサイドに靴・懐中電灯を置いておく習慣もすぐに取り入れられる備えです。避難に時間をかけすぎないことが、津波リスク地域では最も重要な点です。

揺れ・倒壊リスクがある地域で優先すること

内陸部や旧耐震基準の建物に住んでいる場合、建物倒壊・家具転倒による負傷リスクへの対策が優先されます。家具の固定・寝室の安全確保・ガラスの飛散防止フィルム貼りは、今日からでも取り組める具体的な対策です。

耐震診断・耐震補強については、居住する市区町村が補助制度を設けている場合があります。自治体の建築・防災担当窓口に問い合わせると、補助の有無や手続きを確認できます。

  • 水・食料・医薬品の最低3日〜7日分の備蓄は全地域で共通の優先事項
  • 沿岸部では「即座に避難できる準備」が最優先
  • 内陸部では家具固定・耐震補強が直接的な負傷リスク軽減につながる
  • 自治体の耐震補助制度は居住地の担当窓口に確認するとよい

まとめ

南海トラフ地震の被害想定は30都府県に及び、太平洋沿岸の津波リスクに加え、内陸部でも強い揺れ・火災・ライフライン断絶が広範囲に想定されています。まず自分の都道府県・市区町村がどの想定に該当するかを確認することが、備えの第一歩です。

今すぐ取り組めることとして、内閣府防災情報のページで都道府県別の被害想定データを開き、自宅周辺の数値を一度確認してみてください。次に、ハザードマップポータルサイトで自宅が浸水想定区域に含まれるかどうかを地図で確認する流れが、最も実践しやすい順序です。

大規模な地震はいつ起きるか予測できませんが、リスクを正しく理解しておくことで、備えの優先順位は自然に絞られてきます。焦らず、一つずつ準備を積み上げていきましょう。

本記事の内容は、公的機関・メーカー公式情報などの一次情報をもとに整理したものです。実際の避難行動・食品の安全判断・機器の使用可否については、各自治体や公的機関の最新情報を必ずご確認ください。

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